看板ランドセル不振 社長の試練

大ヒットした「天使のはねランドセル」を製造するセイバン(兵庫県たつの市)は、4代目社長の泉貴章さん(46)が引っ張ります。サントリーの研究開発職から家業に転身し、入社直後のピンチも乗り越え、流通や生産の仕組みを転換。顧客ニーズに応える製品づくりや生産業務の効率化につなげました。

――家業の後を継ぐことは、いつごろ決意したのでしょうか。

 同じころ、肝臓がんを発症し、闘病中だった父から「後を継いでくれないか」と言われました。

 少し前の03年、「天使のはね」(肩ベルトの付け根部分に、羽のかたちの樹脂パーツを内蔵。肩ベルトを根元から立ち上げることで、肩と背中に密着させ、負担を軽減するランドセル)が大ヒットして、会社の業績が急拡大し、従業員も増えていました。

 とても迷いましたが、最終的にはMBAの学びが背中を押してくれました。後を継ぐ決意をしてサントリーを退職し、10年10月に取締役としてセイバンに入社しました。

――二つ目の理由は何でしょうか。

 看板商品だった「天使のはね」が、販売不振に陥っていました。競合他社が10年に、「A4サイズのクリアファイルがまっすぐ入る」という触れ込みのランドセルを出して大ヒットし、それよりもサイズが小さい「天使のはね」が、急激に売れなくなったのです。

 卸問屋も小売業者も在庫過多になり、値下げ競争が起きました。最終的にネット通販で安売りされ、ひどい時は市場価格の10分の1で売られていました。これまで育ててきた「天使のはね」ブランドが失墜してしまうと思いました。これが、セイバン入社1年目の状況です。

――社内に理解者はいましたか。

 最初はほとんどいませんでした。未経験のことをやってもらうには、意識改革が必要です。私のよりどころもMBAの学びが大半だったので、そこで学んだトヨタの生産方式「ジャストインタイム」を知ってもらおうと、幹部に研修を受けてもらい、少しずつ理解を得ていきました。

 リードタイム(セイバンの場合はランドセルの生産指示から箱詰めまで)の短縮や、在庫の削減など、「必要なものを、必要な時に、必要なだけ作る」ための手法を、ランドセルづくりにも取り入れていったのです。改善を重ね、14年は100日かかっていたリードタイムを、18年には5日に短縮できました。

 ※後編では、泉さんが手掛けた組織改革の全容や、他社とのコラボ事業、SDGsの取り組みなどに迫ります。

最終更新日:7/16(金)21:21 ツギノジダイ

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6398918

その他の新着トピック