新型コロナウイルスの感染拡大などを背景に、東京など都市部でじわりと広がる自転車通勤。ただ、事故のリスクなどから禁止する企業も少なくなく、会社に内緒で通勤する人たちもいます。
■自己責任で不安、会社に言えず自転車通勤
IT関連会社に勤める男性(25)は、天候の良い日は自転車で通勤する。自宅から自転車で片道5キロ、20分ほど走って最寄り駅で電車に乗り換え、渋谷の勤務先まで向かう。
会社には自転車通勤の制度はなく、会社にも伝えていない。
「勝手にやっているので自己責任で不安。制度化されれば事故に遭った時などリスクも軽減できるので、制度を導入してほしい」と話す。
東京・大手町で働く40代男性も、シェアサイクルでたまに通勤する。勤務先から禁止されているが、コロナ禍で地下鉄通勤を控えるようになり、昨春から始めたという。
「電車の定期代をもらったままなので、後ろめたいところはあり、『闇通勤』みたい。いつまで続くのか。会社には正式に認めてほしい」
通勤時の公共交通機関の密を避けようと、自転車通勤が増えている。au損害保険の昨年6月の調査では、「コロナ禍以降に開始した人」が全体の約2割(115人)を占め、「公共交通機関での通勤を避けるため」の理由が最も高かった。
■通勤手当や駐輪場、事故のリスクなど課題多く
だが、企業が自転車通勤を禁止していたり、制度が整備されていなかったりすることも多い。
NPO自転車活用推進研究会(東京)の事務局長、内海潤さんは「これまで自転車は、一般的な通勤手段として認められず、会社として禁止や黙認することが多かった。私は『こっそりツーキニスト』と呼んでいます。問題があった時は大変なのですが、だまって通勤するケースが多いのが実態」と指摘する。
企業が自転車通勤の解禁に踏み込めない背景には、駐輪場の確保の問題がある。都心では駐輪場も少なく、企業で駐輪場の用意が難しいことも多いためだ。また、天候によって電車なども併用する自転車通勤者への通勤手当をどのように出すのか、といった問題もある。
事故のリスクを理由にする企業も多い。従業員個人が自転車保険に加入しても、通勤中の事故は企業の責任を問われたり、イメージの悪化につながったりする危険がある。
最終更新日:7/16(金)12:45 朝日新聞デジタル