新型コロナの感染拡大による巣ごもり需要の拡大を背景に、2020年度は家具やインテリアなどの販売が例年に比べて非常に好調な推移をみせている。帝国データバンクの調査では、通期予想を含めた2020年度の家具・インテリア販売市場(事業者売上高ベース)は前年度から6.1%増の1兆5000億円となった。ニトリやIKEAなど好調な大手各社が業界全体をけん引する形で、過去最高を更新する見通しだ。
家具業界は昨年5月の緊急事態宣言により、一時的な店舗営業時間の短縮や休業、来客数の減少に見舞われたケースも多く、宿泊業など一部法人向け需要も急減するなどマイナス要素もあった。他方、外出自粛を余儀なくされたことから在宅時間が増え、家庭内の日用品など生活雑貨やインテリア用品、家の中を整理する収納家具などの売り上げが大きく伸びた。また、都市部では自宅のテレワーク環境を整えるためのオフィスワーク家具の販売量が大幅に伸びるなど、コロナ禍を機に新たに生まれた需要を取り込めたことも追い風となった。
こうした外部環境を背景に、家具販売各社では特に低価格帯に強みを持つ大型量販店、EC販売分野に特化した家具店で、前年度から大幅な増収となる企業が相次いだ。家具・インテリア製造小売(SPA)最大手のニトリは、2021年2月期の連結売上高が前期比11.6%増の7169億円 となった。在宅時間の増加を背景に、収納整理用品や台所用品、テレワーク用のオフィス家具まで幅広いアイテムで販売が伸び、年間を通じて前年同月から10%以上売り上げが増加 するなど好調だった。
北欧家具のイケア・ジャパンも、20年8月期は前年から2.7%伸び867億円 。グローバル売上高は前年比4%減の396億ユーロ(約5兆円)と落ち込むなか 、国内事業は来店客の増加もあり健闘。ホームセンターのナフコにおける家具販売事業も6.7%増の475億円 と伸びた。ソファーやデスクなどインテリア全体を提案する「トータルコーディネート」という考え方が浸透するなか、一通りのアイテムが手ごろな値段で買い揃えることが可能な大型店舗の売り上げが好調だった。
コロナ禍でリアル店舗に足を運べないといった事情も後押しし、EC販売も大幅に伸びた。D2C(direct to consumer)業態として「LOWYA」ブランドを展開するベガコーポレーション は、前年を大幅に上回る業績を確保した。ネットでの売り上げは、例えば最大手のニトリでも前年比で50%以上も増加 するなど店頭販売を凌ぐペースで成長を続ける。従来のEC販売で売れ筋となった小型家具やインテリア雑貨だけでなく、デスクやベッドなど、単価と利益率が高い大型家具をネットで注文する土壌が消費者に形成されたことも大きい。
最終更新日:6/23(水)5:46 帝国データバンク