新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、京都市内でホテルの新規開業が相次いでいる。インバウンド(訪日外国人客)は激減して、開店休業状態のホテルも多いが、ワクチン接種が着実に進む状況を受け、秋以降に観光需要が一定回復するとの見方が台頭。各ホテルはコロナ時代に合わせた新しいサービスを模索するとともに、ポストコロナに向けて攻めに転じつつある。
緊急事態宣言下の今月6日、四条烏丸近くに「カンデオホテルズ京都烏丸六角」(中京区)がオープンした。築125年の京町家の雰囲気を残しつつ、スカイスパ(温浴施設)やサウナなどの設備を売りにしている。
計画当初はインバウンドを取り込む予定だったが、コロナ禍を受けて当面は国内の観光客やビジネス客に照準を定める。国内客好みのベッドタイプの部屋を増やすなど客室仕様も変えた。コロナ禍での開業となったが、カンデオ・ホスピタリティ・マネジメント(東京)の倉地恵太取締役は「初年度の客室稼働率の目標は80%。国内の内需で目標を達成させていく」と自信をのぞかせる。
同じ日、世界遺産・二条城の近くで「ザロイヤルパークキャンバス京都二条」(中京区)が開業した。開放的なラウンジが特徴的で、1981年以降生まれの「ミレニアル世代」をターゲットにする。5月末にはプリンスホテルの新ブランドで関西初出店の「プリンススマートイン京都四条大宮」(下京区)も営業を始めた。
今後も9月に米ヒルトンの高級ブランドホテル「ROKU KYOTO,LXRホテルズ&リゾーツ」(北区)が、11月に星野リゾート(長野県軽井沢町)の都市観光ホテル「OMO5京都祇園」(京都市東山区)がオープンする予定で、開業ラッシュは続く。
京都の宿泊業界はコロナ禍の長期化で苦境が続く。京都市観光協会によると4月の客室稼働率は20・6%で、感染拡大前の2019年4月の89・9%にはほど遠い。特に外国人延べ宿泊数は19年4月比で99・8%減と壊滅状態にある。そんな逆風の中でも各ホテルはコロナ後をにらみ、国内観光需要の取り込み準備に余念が無い。
「ワクチン接種が思ったより早く進んでいる。秋以降、それなりに国内需要が回復するのでは」。京都市内で多くのホテルを展開するホテルエムズ(中京区)の大槻紘平社長は見通しを語る。
同社は10日、京都駅と四条大宮周辺に計3ホテルを同時開業した。コロナ対応でテレワークスペースを設け、自社開発のスマートチェックインシステムなどを導入した。インバウンド回復を確信し「今は京都に約1300室あるが、将来的には少なくとも3千室、できれば5千室持ちたい」と意欲を示す。
緊急事態宣言下、帝国ホテル(東京)は祇園甲部歌舞練場(京都市東山区)の隣接地に、オークラ(東京)は真宗大谷派岡崎別院(京都市左京区)の境内にそれぞれ高級ホテルを建てる計画を発表した。両ホテルとも、コロナ後に国内の観光都市の中で京都がいち早く立ち直るとみて、大型投資に踏み切る。
コロナ前まで年間5千万人超の観光客が押し寄せていた京都で、コロナ後を見据えたホテル間競争が再び始まろうとしている。
最終更新日:6/19(土)10:31 京都新聞