氷菓「サクレ」食感追求し36年

1985年に誕生した氷菓「サクレ」が、今年で36周年を迎える。36年間で売上げは順調に伸び、2020年はコロナ禍にも関わらず「サクレレモン」単体で2500万個の販売数を誇る。出入りが激しいアイス業界の中で、変わらず長く愛されるロングセラー商品だ。



 昨今のアイス商品のラインナップを見ると、「濃厚」「リッチ」「果実感」を押し出した商品が並び、プレミアム嗜好にシフトしつつある。その中で、「かき氷の上にスライスレモン」というシンプルでさっぱりとした味わいの氷菓が、なぜ市場で確かな存在感を放っているのか。

 サクレといえば、その名の通り爽やかな「サクサク」の食感と甘くほろ苦いスライスレモンが特徴だが、サクレが誕生する1985年以前は、「氷菓」というと氷とシロップを混ぜただけの、かき氷タイプの商品しか存在しなかった。

 サクレの開発を手掛けたフタバ食品株式会社の齊藤龍樹さん(取締役企画部長)が振り返る。

 「当時はガチガチのハードなかき氷商品が主流でした。開封してすぐはスプーンが通らず、柔らかくなるのを待つうちに氷が溶けて容器が結露してしまう。そんな中、『これまでにないスプーン通りが良く、やわらかい氷菓を作りたい』という大阪営業所・支店長の声により開発が始まりました」

消費者にとってサクレの最大の魅力とはなにか。齊藤さんによると、1985年の発売当時10代、20代だった世代がスライドするように、サクレの現在のメイン購買層は40代、50代、60代で、特に女性からの支持が高いという。

 消費者からは「スッキリとした味わいが気に入っている」という感想が多く、またその食べやすさから、60代以上の高齢層にも親しまれ、「体調が優れない時や食欲が出ない時もサクレならば食べられる」という声も度々寄せられている。

 サクレの内容量は初代から変わらず200mlで、販売価格は初代が100円、2000年代後半からは原材料のコストアップなどの影響を受けるも130円という手に取りやすい価格をキープしている。

 「200mlという内容量は他社商品に比べて多いという意見も社内で度々上がりますが、盛夏期の需要からすると、足りないより多い方が良い。130円に対する満足感を重視しています」と製品開発を担当する小野泰司さん(企画部長代理)は語る。

 定番ラインナップはレモン、オレンジ、あずきの3種だが、他にもメロン、白桃、いちごなど、消費者からのリクエストを参考に、毎年定期的に新味を投入。

 さらには「サクレ コーラ味」「サクレ りんご」「サクレ ソルティライチ」など、販売店限定で発売した商品もその都度話題になり、サクレファン拡大への努力を怠らない。36年変わらない価値と、市場へのサービス精神が消費者の心を掴んでいるのだろう。

アイス業界は昨年からの新型コロナウィルスによる緊急事態宣言の影響はどう受けたのだろうか。

 意外にも、2020年度のアイスクリーム市場は、コロナ禍での「巣ごもり消費」が追い風となったという。フタバ食品も前年比102%の売上げを記録し、アイス市場は年間を通して前年を1~2%程度伸長した。

 「不安感やストレスが募る生活の中で、アイスが『癒やし』の役割を担ったのではないでしょうか」(齊藤さん)

 同時にここ数年SNSでも話題になった、サクレレモンに紅茶、サイダー、ビール、日本酒、レモンサワーなどを加えるという、自宅で楽しめるサクレアレンジも「おうち時間」の充実に一役買っている。

 紹介しきれない程の多様なアレンジは消費者から自然発生したものも多く、サクレのシンプルな構成が人々の「ちょい足し」や「味変」欲を掻き立てているのだろう。

 ロングセラー商品として「ずっと変わらない」印象が持たれるサクレだが、味わいに関してはマイナーチェンジを繰り返しているという。

 製品開発を担当する小野さんによると、現在のサクレは、初代と比べて氷の粒が小さくなっている。より空気を含むことで滑らかかつサクサクの舌触りを実現させた。

 「36年間『サクサクの食感』を追求していますが、もっともっと『サクサク』に出来ると思っています。氷の粒の大きさ、形、シロップの粘性などにまだ改善の余地がある。現状には満足していません」(小野さん)

 味わいも、消費者のモニタリングをもとに少しずつ変化を加えている。マイナーチェンジごと甘みを抑え、スッキリした味わいに変化させ、「さっぱり」に大きく舵を切ったサクレは、現行のトレンドの中では際立つ存在になっている。

 変化の中で、唯一変えないこだわりは「スライスレモン」だという。

 「酸味の強いレモンと甘いかき氷の調和は難しく、辿り着いた独自の『甘酸っぱい』味付けはサクレレモンの根幹を成すもの。レシピはこの先も企業秘密です」(齊藤さん)

 最後に編集部から「スライスレモンは食べるのが正解ですか?」という質問をぶつけてみた。

 「食べていただけるように作っているので、ぜひ食べてください」と、齊藤さんは太鼓判を押した。

 取材・文/原田加菜

最終更新日:6/9(水)14:36 現代ビジネス

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6395674

その他の新着トピック