新幹線は朝夕のピーク時に3~4分間隔で走る。5月16日、東京駅を7時33分に発車した「ひかり633号」の運転士がトイレ衝動に直面したのも、そんな朝だった。
ひかり633号は品川、新横浜、小田原、名古屋、岐阜羽島、米原、京都に停車し、新大阪に10時27分に到着予定だった。小田原出発は定刻の8時7分。そこから名古屋まで約1時間はノンストップだ。トイレ衝動が起きたのは小田原発車前のことだった。
定時運行のプレッシャーがかかる中で、在来線に比べて駅間は長く、トイレ衝動は容易に解消しがたい。運転中に腹痛を感じた運転士が、こらえきれずに熱海―三島間で席を離れ、客室のトイレで用を足したのは約3分。その間、運転席に座った車掌は無資格だったことが事後に発覚し、他人事だと自己管理や緊張感が足りないと片づけてしまいがちな“トイレ問題”は、JR東海を揺るがすことになった。
運転士の離席は、三島駅を1分以上遅れて通過した原因を指令が運転士に問いただしたことで発覚した。新幹線の運行は秒単位だ。それが運転士のプレッシャーになっていたのではないか。そんな疑問をAさんにぶつけてみた。その返答はこうだった。
「私は乗務経験も指令経験もあるから両方の気持ちがわかる。でも、この件は大前提として、乗務員のルール違反。臨停(臨時停車)をかけることはできたのです」
■“乗務員疾病”の規定もある
Aさんは言う。
「安全を考えた場合には、運転資格を持つ車掌も1人以上いたほうがいいと思いますね」
■「トイレに行けない」雰囲気があるのか
金子社長は赤羽国交相に対して、「あってはならないことで申し訳なく思っています」と謝罪。赤羽大臣はこう語った。
「安全に関するルールが必ずしも守られなかったという現象をどうとらえるかが大事だと思います。こうした現象がなぜ起こったのか。そうした雰囲気が社内にあるのではないかとか。ゆるみがあってはならないし、世界でいちばん安全な鉄道ということで、そこはしっかりとJR東海をあげて、安全神話に陥らない取り組みをお願いします」
最終更新日:6/8(火)13:46 東洋経済オンライン