トヨタ自動車(本社・愛知県豊田市)の男性社員(当時28歳)が4年前に自殺したのは、上司のパワーハラスメントで適応障害を発症したのが原因だったとして、豊田章男社長がパワハラと自殺との因果関係を認め、遺族に直接謝罪していたことが判明した。トヨタは徹底した再発防止策を誓うとともに、解決金を支払うことで遺族と和解した。遺族側の代理人とトヨタが明らかにした。
トヨタは当初、パワハラと自殺との因果関係を否定したが、2019年9月に豊田労働基準監督署が労災認定すると、豊田社長が一転して因果関係を認めた。
遺族側によると、東京大大学院を出た男性は16年3月、本社で車両設計を担う部署に配属された。直属の上司から「死んだ方がいい」などと叱責されるようになり、適応障害と診断された。7月から3カ月間は休職。復職後も「死にたい」などと漏らし、17年10月に自ら命を絶った。
日本を代表する巨大企業でなぜパワハラは見過ごされてしまったのか。男性が被害を訴えていたのに社内で情報共有されていなかったことが新たに分かり、トヨタは遺族に一連の詳細な経緯を伝えた。和解内容には、匿名通報を受け付ける相談窓口の新設などの再発防止策も盛り込まれた。
トヨタは「大切な社員の尊い命が失われた事実を真摯(しんし)に受け止め、この痛みを一生忘れず再発防止を徹底したい」とコメントした。遺族も代理人を通じ、和解しても戻ってこない男性への思いや、トヨタへの要望をつづった談話を公表した。【戸上文恵、松本紫帆】
最終更新日:6/7(月)13:36 毎日新聞