人口減少時代の新たな農村政策と土地利用を進めようと、農林水産省は4日、2つの有識者検討会の中間とりまとめを公表した。新型コロナウイルス感染拡大により都市部よりも「低密度」な農村への関心が高まる中、移住者らが農業を含む複数の仕事をする「半農半X(エックス)」「マルチワーク(複業)」といった多様な働き方への支援や、中山間地などで増える耕作放棄地について、長期的には農地として維持することが難しくなる場合にまで踏み込んだ管理のあり方を提言した。
記者会見した両検討会の座長のうち、農村政策検討会の小田切徳美・明治大教授は5年ごとに改められてきた国の「食料・農業・農村基本計画」について、平成12年の計画は「食料自給率」、17年は「農政改革」、22年は民主党への政権交代を受け「6次産業化」、27年は自民党への政権交代を受け「多面的機能」がテーマだったと整理。
その上で、今回の両検討会が生まれるきっかけとなった昨年の新基本計画で「初めて本格的に農村政策が体系化できた」と指摘。「農政は産業(農業)政策と地域(農村)政策がいわば車の両輪。従来の農政は少し産業政策寄りだったが、両輪が並び、さらに両輪をつなぐ『車軸』を作ることで、今回の農村政策で新たに位置づけられた『半農半X』のような多様な人材が産業政策の中で、担い手として成長していくことが可能になる」と、今回の提言の意義を語った。
また、土地利用検討会の池邊このみ千葉大教授は、今回の新たな視点として①農村の仕事や暮らしも考えた立体的な土地利用②子育て層の女性らにも開かれた農村③土地の適切な管理を通じた災害に強い国土づくり-を盛り込んだと説明。
「低密度の価値を見つけて住んでみようと考える若い人たちが、今回の施策によって少しでも挑戦し、農村のコミュニティーに入っていって、最終的には定住する。そんなシステムになればと思う」と述べた。
提言のうち、地域づくりを支える外部人材を育成する研修制度はすでに5月から実現。農水省は今後も提言を施策に生かしていく。
最終更新日:6/6(日)12:41 産経新聞