エプソン「社内の紙半減」の訳

プリンターメーカーであるセイコーエプソンが、社内で使用する紙を半減する活動を開始している。紙への印刷量を増やすことでビジネスを成長させてきたエプソンにとって、自ら首を絞める決断に見えなくもない。だが、むしろそこには、エプソンの小川恭範社長の強い危機感があった。



 エプソンが社内で取り組んでいる紙半減への取り組みは、正式には「エプソン 紙を減らす活動」と呼ばれる。

 小川社長の号令のもと、紙を使う仕事のやり方を見直し、2021年度上期(2021年4~9月)までに、全社平均で、1人1日当たりの紙の使用量を、2020年度上期比で半減するという目標だ。つまり、この1年で紙を半減するというプロジェクトになる。

しかし、デジタル化の進展やリモートワークの広がりなどによって、ペーパーレス化の進展は、大きな潮流となっている。

■紙の需要を維持したいという気持ちはない

 「大きな流れでいえば、デジタル化によってペーパーレスが進み、紙への印刷は減少することになる」と小川社長も予測する。そして、ペーパーレス化の潮流を前提に「紙のよさばかりを前面に打ち出し、紙の需要をなんとか維持したいという気持ちは、今のエプソンにはない、紙を減らす中で、エプソンは何ができるかを考えていくことにした」と語る。

ただ、「プリンターの会社ではあるが、紙が邪魔だと思う社員もいる。それは、多くの会社に共通していること。その意識をしっかりと持ち、そのうえで、エプソンのプリンタービジネスを考えなくてはならない」と、小川社長は一蹴し、このプロジェクトを推進した。

■5つのイノベーション領域を設定

 セイコーエプソンは2021年3月、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」を発表。その中で、顧客価値や社会課題の軸から5つのイノベーション領域を設定している。

実は、3月の「Epson 25 Renewed」の説明会で、小川社長があえて触れなかったものがある。それは、環境ビジネスに関する説明で、ドライファイバーテクノロジーの応用例をあげたときのことだ。

 スライドには、使用済みの紙から、再生紙や緩衝材、断熱材を生み出す事例を明確に示したが、その横に、トレイやコーヒーカップ、椅子などのイラストを描いていたことにはいっさい触れなかった。

■紙を新たな材料として製品化できる

最終更新日:6/2(水)10:29 東洋経済オンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6394965

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