コロナ内定取り消し 若者の闘い

九州北部の20代の女性は昨春、新型コロナウイルスによる業績不振を理由に内定先の企業から採用を取り消された。落ち度はない自分を責めて泣き伏したこともあったが、支えてくれる人の力添えで闘えた。あれから1年、その企業で働く日々に感謝する。進学や就職でしわ寄せを受けたり、不安を募らせたりする若者たち。「頼れる人は絶対いる」と女性は語る。



 大学卒業を控えた昨年3月中旬。女性宅に内定先の企業から茶封筒が届いた。ニュースでは内定取り消しが話題になりつつあった。「まさか」と封を切った。

 「新型コロナウイルスの影響による内定取り消しについて」

 A4サイズの紙1枚に、「今後経営破綻を招きかねない困難な状況」として内定を取り消すとある。たった9行。「どうしよう…」。翌日、企業の幹部と電話で話しても「決定事項」と取り付く島もなかった。

 取り消しにつながることは何もしていない。卒業式も卒業旅行もなくなり、気持ちを切り替えて4月から働こうと思っていた。「いらない人間なのかな」。社会からつまはじきにされたように感じた。

 混乱しながらも、インターネット検索で労働問題に力を入れる西野裕貴弁護士(福岡市)を知る。励ましてくれる母親と事務所に向かった。

 「この取り消しは、ずさん過ぎて認められない。あなたに全く非はない」。西野弁護士に言ってもらい、心が軽くなった。「間違っていることを『間違っている』と言えない大人にはなりたくない」。闘おうと決めた。企業側と交渉を重ねること数カ月。昨夏に正社員として採用された。

 今は事務職として、社員間の連絡調整や書類処理を担当する。上司や先輩から、言葉遣いや電話対応の仕方を教わり「毎日、全てが勉強になって楽しい」。一方、外出先から電話をかけても誰も出ないと心配になることがある。「嫌がらせだったりして」と。もしそうでも「(弁護士など)味方がいる」と思える。

 未曽有の感染禍とはいえ「紙切れ一枚で若者を切るようなことはあってはならない」と西野弁護士。女性も一歩を踏み出してよかったと思っている。「泣き寝入りしていたら、社会に拒否された感覚が残り続けたと思う。闘った分だけ成長できたし、強くなれた」 (森亮輔)

最終更新日:5/30(日)10:22 西日本新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6394706

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