札幌市の歓楽街ススキノ発の名物スイーツとして観光客や市民に愛されている、「締めのラーメン」ならぬ「シメパフェ」。新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言発令による酒類の提供自粛のあおりを受け、苦境に陥っている。落ち込んだ売り上げを少しでも伸ばそうと、「シメパフェ」を提供する店舗が考えた秘策は――。【源馬のぞみ】
◇支援も手薄「生殺し状態」
「道外からのお客さんも減り、札幌の店舗は売り上げが8~9割減。行政の支援も手薄と言わざるを得ず、生殺し状態です」。札幌・ススキノの夜パフェ専門店「パフェテリア パル」など北海道内外で飲食店15店舗を経営する「GAKU」の橋本学代表(38)は、こう言って肩を落とした。
コロナ禍前、札幌市内に3店舗ある同社のシメパフェ店はいずれも旅行雑誌に掲載される人気店だった。客層は道外からの観光客と地元客が半々で、予約で満席になることも珍しくなかったという。
だが、感染が拡大した昨春以降、観光客は激減。不要不急の外出自粛や飲食店に対する時短営業が要請されると、地元客の足も遠のいた。5月中旬からは、ススキノの3店舗のうち「ななかま堂」以外の2店舗を休業している。
外出自粛で広がる「ステイホーム」需要に対応しようと、宅配に力を入れる飲食店もあるが、橋本さんは「みんなで飲み会終わりに食べるからこそ楽しく、おいしい」シメパフェには適さないと判断。代わりに、新業態のテークアウト専門店「パティスリー・オカシ・ガク」を7月下旬、ススキノにオープンさせる。
新店舗で目玉となるのは、瓶詰めのフィナンシェなどの焼き菓子やショートケーキが買える自動販売機の設置だ。「自販機スイーツ」は試作を繰り返し、見た目もかわいらしく、おいしい商品に仕上がった。橋本さんは「店員と接触せずに買えて、家でも食べられるケーキの需要に着目した」といい、「コロナが収束した後も、飲んだ帰りの手土産として買ってもらえる」と期待を込める。
ススキノにほど近い同市中央区の「パフェ、珈琲、酒、佐藤」は通販サイトでの新商品販売に活路を見いだす。それは、パフェ手作りキット「おうちでシメパフェ」だ。店で一番人気の「塩キャラメルとピスタチオ」の材料が入り、アイスクリームやアーモンド、リンゴのコンポートなどを付属のパフェ容器に盛ると、お店さながらのパフェが完成する。昨年8月に販売を開始。月に150~200セットが売れ、好調だ。
店を経営する「アリカデザイン」(同区)代表で札幌パフェ推進委員会メンバーの小林仁志さん(51)は「外食が難しい中でも、おいしいものを食べたいという思いは皆さん持っているはず。そんな方々に喜ばれている」と話す。そのうえで「商品をきっかけにお店について知ってもらい、感染が落ち着いた時に足を運んでもらうきっかけになれば」と望みをかける。
◇シメパフェ
飲食の締めくくりに食べるパフェ。北海道では冬でも室内を暖かくしてアイスを食べる人がおり、札幌・ススキノでは7、8年ほど前から深夜営業のパフェ専門店が出店していた。関係者らがこれに目を付けて「シメパフェ」と命名し、2015年に札幌パフェ推進委員会を設立。加盟店舗は現在25店。緊急事態宣言発令前は酒と一緒に提供する店もあった。
最終更新日:5/29(土)15:33 毎日新聞