ランドセル商戦のピークが年々早まる傾向にある。「工房系」と呼ばれる職人手作りの予約限定品が人気で、この時期、売り切れを心配する親子らが店舗や展示会を熱心に見て回っている。デパートでも、高級ブランドの売れ行きが好調だという。背景には少子化の影響もあるようだ。
23日、宇都宮市内で開かれた展示会。色とりどりのランドセルが並び、実際に背負って品定めをする親子たちがいた。
那須塩原市の会社員、藤田真弓さん(31)は、1年以上前からランドセルの情報をインターネットなどで仕入れ、すでにいくつかの展示会や店舗を回ったという。「行くたびに『決めたい』と思いますが、どれも良くて決められない。工房系は売り切れるのが早い、とは聞いているんですけれどね」
展示会を開いた中村鞄(かばん)製作所(東京都)によると、同社の受注はどんどん前倒しになっている。約10年前は夏~秋が多かったが、5年ほど前にピークがお盆時期へと早まり、近年は春の大型連休の前後に集中するようになった。同社のランドセルは主に5万~6万円台。今年はグレーの人気が目立つという。
同社担当者は「すべて手作りで、生産数には限りがある。気にいった素材や色の商品を手に入れようと、早く動くお客さんは増えている」と話す。少子化もあって、親や祖父母がランドセルにお金をかけるようになり、丈夫さや細やかさを強調する工房系への注目が高まっているという。
同じく工房系の大峽(おおば)製鞄(ほう)(同)は、昨季より2週間早い3月26日から予約受付を始めた。「牛革最高級」をうたう8万円台のランドセルが売れ筋。大型連休にかけて受注のピークを迎え、すでに昨年の6月末時点に相当する注文数だという。
栃木県上三川町の同社工場直営店では、新型コロナウイルス対策のため、30分間限定3組の入れ替え制で販売している。同社幹部は「ピークが前倒しになったので余裕をもって来場を予約して頂ける」と話す。
東武宇都宮百貨店(宇都宮市)では、「アナスイ・ミニ」や「メゾピアノ」など8万~13万円台の高級ランドセルが売れている。色別では、パープルやミントグリーンが女子に人気で、ブランドによっては、すでに売り切れた色もあるという。
売り場担当者は「早いうちにブランド商品を買い求める方が年々増えている」と話す。コロナ禍で3世代そろっての来店は減り、祖父母が孫の希望する商品を買い求める事例が増えたという。(池田拓哉)
最終更新日:5/26(水)14:07 朝日新聞デジタル