長尺増えるトイレ紙 企業の狙い

トイレットペーパーは12ロール入りが一般的ですが、最近は1ロールに巻かれた紙が長い「長尺」のトイレットペーパーが急速に増えています。

都内のドラッグストアを取材すると、よく見る12ロール入りのトイレットペーパーの横に、ロール数の少ないものが並んでいます。この店舗では長さが3倍の長尺トイレットペーパーが4ロール入りで382円(税込み)。12ロール入りの商品より50円ほど安く販売されていました。4ロール入りを2つ、3つと買っていく客も増えているといいます。

店側へのメリットも大きく、従来よりも省スペースの長尺トイレットペーパーは店頭にも多くの数が積めるため、補充の回数が減ったといいます。また同じパック数が入ったダンボールも長尺は従来のものより小さく、在庫をたくさん置けるようになったため、発注する回数も減らすことができました。

こうした長尺のトイレットペーパーは現在市場全体の20~25%。今年の春、トイレットペーパーの生産をすべて長尺に切り替えた日本製紙クレシアの担当者は「巻き数が長くて、一つのパックに入っているロール数が少ないものを、長持ちロールカテゴリーと呼んでいます。3倍の4ロールが一番売れ筋だと思います」と話します。

1ロールの長さが従来の3倍というトイレットペーパーですが、断面を見てみると、従来品は少し隙間があるのに対して、長さ3倍の製品は隙間なく密度が高いのがわかります。

紙の密度とエンボス加工、巻き加工の3つの技術を合わせて作っていますが、きつく巻くことで、柔らかさは損なわれないのでしょうか。

「トイレットロールの表面を見ていただくとわかるんですけど、ふんわり感を出すためにエンボス加工が入っています。これが入ることで長く巻くのが難しくなるのですが、当社の技術を使い、ふんわり感を出しながら、長く巻く加工をしています」(日本製紙クレシア担当者)

日本製紙クレシアが1.5倍の長尺商品を初めて発売したのが1996年。以来、改良を繰り返し、3倍の長さでも柔らかさを残せるようになりました。従来品より太くなっていますが、家庭用のトイレットペーパーホルダーに収まる太さです。

家庭での利便性が受け、販売が伸びている長尺のトイレットペーパーですが、企業にとっては別の狙いもあります。

「12ロールの商品を運んでいるときよりも、3倍4ロールを運んだ方が積載効率が上がります。このため40%ほどCO2の排出量も削減できます」(日本製紙クレシア担当者)

かさばるトイレットペーパーは”空気を運んでいるようなもの”と言われ、物流効率の悪さが課題でしたが、長尺にすることで物流コストを大幅に削減できるようになりました。政府が脱炭素に向け、数値目標を掲げる中、企業も環境に配慮した取り組みが欠かせないため、長尺商品への全面切り替えを決断しました。

こうした環境に配慮した取り組みをさらに進めているのが王子ネピアです。石油由来のプラスチックフィルムをやめ、紙のパッケージで包装したトイレットペーパー「ネピア ネピecoトイレットロール 2倍巻 4ロールダブル」を公式オンラインショップで先週から発売しました。

紙のパッケージでは雨などで濡れたときに破けてしまわないかが心配になりますが、水濡れ対策をしており、実際に試してみると紙の表面が水を弾き、かなりの撥水効果が確認できました。

ただ、こうした特殊な加工を施せば製造コストも高くなります。商品価格は4ロール入りで570円(税込み)。長尺なので、8ロール分だとしても、400円前後で販売されている12ロールよりも割高です。

しかし、王子ネピアの担当者によれば「想定以上の反応をいただいておりまして、おかげさまで順調に売れているというところです。お客様がこういった商品を望まれていたんだろうなとは思います」と売り上げは好調だといいます。

同社では今後さらなる改良を加え、徐々に紙の包装に切り替えていく考えです。

「より環境に優しい商品を出していきたい。結果的にはSDGsの達成であったり、脱炭素社会の実現に寄与していきたいと考えています」(王子ネピア担当者)

最終更新日:5/26(水)7:30 テレ東BIZ

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6394324

その他の新着トピック