いまメダカブームがきているという。自宅内のわずかなスペースで手軽に飼育できることから、コロナ禍で需要が増えた。ホームセンターなどで安価で売られているものもあれば、高い個体は1匹10万円をくだらない。なぜ人は高級メダカに熱狂するのか。メダカブームを牽引する改良の第一人者に話を聞いた。(取材・文:キンマサタカ/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
それまでなんとなく飼育していた戸松は、メダカと真摯に向き合うようになった。あらためて購入したダルマメダカを大事に育てあげ、ついに孵化と固定化に成功した。
野生のメダカは絶滅危惧種だが、改良メダカはそれにあたらない。学校などで飼育されるオレンジ色のヒメダカも実は改良メダカである。
田んぼなどに生息するクロメダカは日本の固有種で、南日本と北日本で大きく二つの種がいるのだが、その中に色素が抜けたメダカが見つかった。それがヒメダカの祖先だ。
そもそも改良メダカはどのように生まれたのだろう。江戸時代に観賞魚としてメダカが人気になると改良が盛んになり、ヒメダカが広く流通し、庶民から愛されるようになった。
「江戸時代には器にメダカを泳がして、それを釣って楽しんだという文献も残っているそうです」
近年、観賞魚飼育が一般的になると、改良はさらに進んだ。繁殖のスピード感も背景にあるようだ。メダカを交配させることで子孫を増やすことができる。メダカは生まれてから2カ月で卵を産むため、わずか1年間で3世代を同じ水槽に共存させることもできる。
「その中で珍しい特徴を持ったメダカ同士をどんどん掛け合わせて、特徴を固定化するんです」
その一方、近年問題になっているのが盗難だ。
「うちも一度で70万円くらいの被害を受けました。夜中に車でやってきて水槽からメダカを盗む手口です。おそらく転売目的でしょう」
盗難届を出しても実際に犯人を捕まえるのは困難だという。その理由は個体の証明ができないからだ。転売されているのを見つけ「これはうちのメダカです」と言っても、警察はそれを同定するすべがないのだ。それゆえ自衛するしかない。
「防犯カメラを5台置いてから減りましたね。侵入者と車のナンバーが特定できれば捕まえられますから」
最終更新日:5/9(日)18:00 Yahoo!ニュース オリジナル 特集