自撮り納品 副業でモデル広がる

【近ごろ都に流行るもの】

 看護師、会社員、ヨガ講師などの本業を持っている人が、休日に広告被写体を務める「週末モデル」という副業がある。これまでは一般的なスタジオ撮影で行われてきたが、コロナ禍での“非接触”の苦肉の策が思わぬ反響を呼んでいる。モデル自身がリモートで自撮り写真画像を納品する「リモフォト」だ。スマホの高性能化に加えて、SNS慣れした若者にはお手の物。カメラマン不要のため企業側は低予算で発注でき、モデル側は自宅で短時間で副収入が得られ、この1年で一気に広がった。「本業を頑張るための副業」として活動する看護師に密着した。(重松明子)



 都内のワンルームマンション。自宅のベッドに座り、グラスを手にする大原茉莉奈さん(27)。スマホに向かい、次々とポーズを取り表情を変えている…。この日はグリーンスムージーの広告依頼で、撮影は1時間ほどで終わった。

 モデルは月2、3回。本業は看護師だ。非常勤身分だが週に5日、行政機関とPCR検査場所に出勤しコロナ対応に追われる。「医療現場から離れる時間が息抜きになる」と大原さん。

 納品した写真は主にネット広告に使われ、友人から「買ったよ」と声をかけられることも。「役目を果たせたと感じてうれしい」

 田舎の小学生だった頃の夢はモデル。いつしかあきらめ、現実的なもう一つの夢である看護師になった。

 新卒で勤務した地方病院での激務。患者を看取るなかで「後悔しない生き方をしたい」との思いが強まり一昨年上京した。リモフォト用に自宅インテリアを白に統一。クライアントの要求に応えるためポージングも研究中だ。「趣味の延長で楽しいですね」

 そんな大原さんに触発されて、モデル登録する看護師も続いている。「副業で輝ける別の場所を作ることで本業も頑張れる」と大原さん。「辛くて当たり前という体育会系の体質に疲弊し、辞めてしまった人も多く知っている。私は、看護師の新しい働き方のロールモデルになりたい」。副収入以上の意義を見つけた。

 「コロナ禍での苦肉の策ですが、ハードルが下がって登録モデル数が倍増。客室乗務員や講師、銀行員などあらゆる職種で増えた。シニアも重宝されている」

 リモフォトを運営するモノクロム(東京都渋谷区)の筒井まこと社長(42)が語る。

 同社は平成29年末、副業解禁の流れを受けて、モデル希望の女性と広告を作りたい企業をマッチングするスマホアプリ「週末モデル」を事業化したが、昨春の緊急事態宣言下で通常撮影が難しくなり、すべてをモデルに任せるリモフォトを考案。企業から宣伝したい商品や制服などをモデルの自宅に送り、自由に撮ってもらう方法だ。

 コストは約10分の1。定額料金化したことで、登録企業は1700社に倍増、成約は2・5倍にのぼった。9カット3万3千円の料金のうち、モデル側に7割の2万3100円、残りが運営側の収入となる。モデル手配が難しい地方企業の依頼も多い。

 岡山市のジーンズメーカー「ボブソンピーチフォート」は昨年7月、リモフォトのモデルを募集。100人を超す応募から選んだモデルから、ベルボトムをクールに着こなした写真が納品された。

 「百点満点以上の出来栄え」と、オンライン事業部の西山範彦さん(41)は絶賛。「直接合わなくても、こちらの意図を想像以上に理解してくれた。モデルの撮影センスに委ねることで、商品の魅力が引き出された」と喜ぶ。

 これまでに4人を採用したが「正直、クオリティーには個人差が大きい」とも打ち明ける。撮り直しを求めた写真もあった。

 そのうえで、「企業側には事前にコンセプトやイメージ、撮影の環境設定など、希望を具体的に伝える努力が必要」という。写真は自社のインスタグラムや通販に活用。購入者が参考にしやすい“普通の人”っぽい中背モデルも採用している。

 求められる像もさまざま。副業モデルが「美」を多様化させてくれるかも。

最終更新日:5/6(木)13:40 産経新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6392554

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