トイレのボタン多すぎ?戸惑いも

視覚障害のある人にとって、個室トイレの数あるボタンの中から、洗浄ボタンを探すのは一苦労。「(洗浄ボタンなどの)位置が統一されることを願う」とツイッターでつぶやいた全盲の女性の投稿には、多くの反響がありました。反響の中には、トイレの壁面に何をどのように配置すべきかを定めたJIS規格があるという情報も。規格はあるけど、普及はまだまだということ?――。トイレ設計を多く手がける設計事務所に聞きました。(withnews編集部・金澤ひかり)

――ボタンでいえば、最近のトイレはボタンの数がとても多いですよね。

「ボタンの種類が多すぎる」というのはこれまでも言われてきたことではあります。
洗浄ボタンも「大」「小」あるし、ウォシュレット機能も「おしり」や「ビデ」などに分かれ、さらには非常ボタンまで…と、たくさんありますよね。

見えない方にとっては、ボタンが多すぎると「どれを押したらいいのかな?」と不安に思うようです。その気持ちは視覚障害を持っていなくてもわかります。それに、それぞれのボタンの機能を確認するのに必要な点字すらない場合も多くあります。

ちなみに、ボタンの数については、認知症の方たちも戸惑われるようです。
以前検証に立ち会うことがあったのですが、たいていの方は「用を足したら流す」ということまではわかっておられます。ですが、「ボタンやレバーを探す」という段階で混乱してしまいました。とりあえず一番目立つものを探し、押した結果、非常ボタンを押される方が多かったんです。


――確かに、浅井さんのツイートにも「私でも探してしまう」というコメントがいくつかついていました。どうして洗浄ボタンを含め、トイレの機能は統一されないのでしょうか?

改正バリアフリー法(2021年4月施行)に基づくガイドラインでは、洗浄ボタンと非常ボタン、それにトイレットペーパーホルダーの位置関係を定めたJIS規格が盛り込まれ推奨されています。
そこには、トイレットペーパーを中心に、その上に洗浄ボタン、その奥に非常ボタンを設置すること/洗浄ボタンは視覚障害者にわかりやすい押しボタン式/さらにわかりやすくするために文字・図記号が見やすいように背面との明度・彩度の差を大きくすることなどが明記されています。

この法律は拘束力を持つものと「推奨」となっているものがありますが、前述のものは後者で、昔からあるトイレは、すぐにすべてを同じ規格にすることは難しいです。

また、配置でいうと、トイレに座りながら手を伸ばせる範囲が約1メートル。その1平方メートルの中に、ボタン類、トイレットペーパーとその予備、手すり、多機能トイレの場合は座ったまま使える手洗いなど、設置しなければいけないものが山ほどあります。
狭い範囲の中で、それらをどのような配置にするのかは、使いやすさをもっと研究し、トータルで判断した方がいいと思っています。

――ここまでうかがうと、残念ながら、一律に統一していくことが難しい分野なのかなという感じもします…。

昔のトイレといまのトイレとでは、どのような変化があるのか、最近私たちが手がけた、新築の熊本の駅ビルのトイレと、昔から付き合いのある築45年ほどの商業施設のトイレを比較してみたんです。
いずれも建物の商業部分の床面積がほぼ同じ面積(3万平方メートルほど)で、その中のトイレの個数が12カ所で同じ。各階に多機能トイレを設置しているのも同じです。
ですが、この建物全体の中でトイレが占める面積は大きく異なりました。

築45年ほどの商業施設は500平方メートル、新築の駅ビルは1000平方メートルと、2倍になっているんですよね。
つまり、昔といまとでは、トイレに対する思いのかけ方、重要視のされ方がまったく違うことがわかります。

一方、新築の駅ビルは改正バリアフリー法にのっとってバリアフリーを十分考えることができますが、築年数の経っている建物で、法律の考えを新築と同じように十分反映できるかというと、努力してもできないところもあります。そのあたりをどのように法整備の中に組み込んでもらえるかが重要です。

最終更新日:5/5(水)12:46 withnews

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6392481

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