「完全復活」たいめいけん3代目

【コロナ禍を生き抜く飲食店経営者たち】

 たいめいけん 茂出木浩司シェフ(53歳)

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 昨年10月に店を閉めました。コロナの影響ではなく、日本橋地区の再開発のためです。仮店舗での再開は5月末を予定しています。

 50年近い思い出がある建物でしたから、壊されるのはショックでした。ただ、さまざまな飲食店の有名シェフたちから「こういう時期なので、(再開発の移転なので補償が出るため)閉められてよかったね」と言われ、うなずく思いもありました。

 その頃は、再開時期にはコロナが落ち着いていると思っていましたから。ところが落ち着くどころか……。正直、コロナのことを考えるとどうしていいか分からない部分も多いんです。

 でもね、ここで燃え尽きるくらいまでやるんです。キッチンを見てください。広いでしょう。まさに自分の夢、自分のステージなんです。仮店舗ですが、本店舗くらいにお金をかけてつくっているんですよ。(再開発で壊した)前の店は2代目の父の考えでつくられたものですが、この仮店舗では、自分がやりたかったことをすべて詰め込みました。2階のカウンター席に座ったお客さまは、僕の調理する姿を見ながらお食事をする。1階には、オープンテラスももうけました。窓も多く、開けられるので、コロナ対策もしっかりできます。

■3代目の自分が失敗できないという重圧

「たいめいけん」は、初代が焼け野原から店を立ち上げ、2代目がバブル時代をつなぎ、3代目の自分へとわたされた店です。僕だけ失敗できないというプレッシャーもあります。コロナには負けられません。なんとしても軌道に乗せないと。デリバリーやコンビニとコラボしての商品開発、冷凍食品の開発などこれまでもさまざまなジャンルに挑戦してきましたが、いっそう気持ちを盛り上げ、新しいことにも取り組んでいこうと考えています。

 また、やはりお客さまの安全が第一。昨年営業していた頃は、コロナの報道が入り始めたごく初期に飛沫防止のアクリル板を設置し、マスクを着用。「〇〇〇がいい」と聞いたら即決で手に入れ、できることは何でもしました。この店舗でも自動体温計を玄関に設置し、引き続き感染拡大防止対策を徹底します。

 実は昨年8月にステージ1の肺がんが見つかったんです。でもそれも、完治し、完全復活しました。仮店舗再開に向け全力投球でいきますよ。

▽茂出木浩司(もでぎ・ひろし) 1931年創業の老舗洋食店「たいめいけん」3代目シェフ。「たいめいけん」は日本橋再開発のため2025年まで仮店舗で営業。仮店舗は5月末再開予定。営業時間は電話などで確認。

最終更新日:5/3(月)17:14 日刊ゲンダイDIGITAL

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6392332

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