4月25日から5月11日までの17日間、東京、大阪、京都、兵庫では新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が発出されている。ゴールデンウィーク中の感染者増を抑える狙いで、「多くの人々が休みに入る機会をとらえ、効果的な対策を短期間で集中して実施する」(菅義偉首相)。
3度に及ぶ宣言発出で、観光業は春休みに続きハイシーズンの需要を失うことになった。旅行会社は団体旅行を催行できずただでさえ苦しい中、個人旅行の需要まで取り逃した。
横浜のホテルニューグランドはゴールデンウィーク中、客室の5割が埋まっている。約9割という例年の水準からみれば低いが、キャンセルは少なかった。神奈川県など近隣からの客が中心で、感染が増えている都内には行きづらいため横浜に泊まる、というニーズもあるようだ。
こうした環境変化の背景には、消費者のマインドの変化がある。昨年の4~5月の宣言中は国や自治体のコロナ対策も手探りで、消費者は「旅行に行く」という選択肢をほぼ持てなかった。だが、1~3月の宣言中には「自粛の意識が緩くなってきている」「春休みは絶対に泊まる、と意気込むリピーターもいる」(ホテル関係者)といった声も聞かれた。
ただし、「感染リスクを低く抑え、快適に過ごせる」という認識が利用者に広まれば、コロナ禍でも宿泊需要は底打ちとなる可能性がある。盛大に旅行を楽しむわけにはいかないこの時期、客を取り込むにはホテルに泊まる理由を作り続けることが重要だ。
ホテルニューオータニ(東京)は今回の宣言中、1479室の全客室でルームサービスの食事・ドリンクを大幅に拡大する「スーパールームサービス」を行っている。料理は120種、ドリンクは300種に及び、ソムリエやバーテンダーが客室に出張する。多くの飲食店が休業する中、「密を避け、客室でゆっくり過ごす」ニーズをとらえる取り組みだ。
最終更新日:5/3(月)11:16 東洋経済オンライン