新型コロナウイルスの緊急事態宣言が東京、大阪、京都、兵庫の4都府県へ発令されたことを受け、関西のホテルで休業が相次いでいる。29日始まったゴールデンウイーク(GW)は本来、客室の稼働率が7~8割まで高まる「書き入れ時」だが、安全対策が最優先で、商機を失った格好だ。コロナ禍収束の兆しは見えず、ホテル業界の苦境は続く。(山本考志、黒川信雄)
「感染拡大を防ぐためには(休業などの対応は)いたしかたない」。こうため息をつくのは、あるホテル関係者だ。当面の間休業するホテル近鉄ユニバーサル・シティ(大阪市)も「お客さまの安全を第一に考慮した結果、やむを得ず(一時休業する)」としている。
一時休業は、阪急阪神ホテルズが運営する大阪新阪急ホテル、梅田OSホテルなどほかの主立ったホテルでも始まった。
全国で11カ所の宿泊施設を運営するロイヤルホテルは宿泊業務は休業しないが、対象地域にある6カ所のホテルで一部のレストランやバー、ラウンジなどを休業している。
ホテルごとの状況に合わせてシャトルバスの運休やフィットネスジム、室内プールの閉鎖など利用できるサービスや施設も制限した。同社は「政府や自治体の要請に沿って利用を制限した。感染収束後に幅広く利用してもらえるようなプランを考えていきたい」としている。
GWは通常であれば、国内外から多くの宿泊客を見込める稼ぎ時だ。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、コロナ禍前の令和元年5月、客室稼働率は大阪府79・2%、京都府71・1%、兵庫県57・4%だった。だが、コロナ下での昨年5月はそれぞれ、9・3%、6・2%、14%まで落ち込んだ。
JTBが今年4月9~14日にインターネットで2万人に行った意識調査によると、大型連休に旅行へ「行く」「たぶん行く」と答えたのは計10・3%と1割止まり。予定がない人の多くは感染拡大を理由に挙げた。調査は緊急事態宣言前のため、旅行意欲はさらに冷え込んでいそうだ。
阪急阪神ホテルズの親会社、阪急阪神ホールディングス(HD)の大塚順一執行役員は「(宿泊の)需要は、前提として戻らないと考えている」と厳しい見方をする。コロナの影響が続くことを見越し、ホテルも新たなビジネスモデルや構造改革が求められる。
最終更新日:4/30(金)8:50 産経新聞