京浜急行電鉄の新造車両「1000形1891編成」が話題だ。ロングシート・クロスシートに切り替えられる回転式座席や車内トイレといった同社初の試みに加え、前面展望席など私たち鉄道趣味者にとってもうれしい設備が用意されている。
だが、その新造車両に関連して、こんな話を聞いた。3月下旬のある夜、試運転の様子を撮影しようと、金沢文庫駅のホームにいわゆる「撮り鉄」数十人が集結。中には黄色の点字ブロックの外側へ三脚や脚立を置き、線路側へ大きくはみ出してカメラを構える者もいた。そのため入ってくる列車は手前で一旦停止したり、危険回避のために徐行したりせざるえなかったという。
B鉄道での対応はありがたかった一方、A鉄道で係員から注意されたときには、私は「なぜこんなことを言われなければならないんだろう」と心の中で反発した。しかし、B鉄道の対応はむしろ例外であるし、A鉄道の係員も注意はしても駅構内で写真撮影することまで禁止はしなかった。
一部例外はあるにせよ、過去、現在において駅構内での撮影は許されてきた。時に係員が撮影に対して配慮してくれることもある。昔国鉄がキャンペーンを展開した「いい旅チャレンジ20,000km」では、対象線の起点と終点の駅名標とともに参加者が写真を撮るということを条件としたから、むしろ鉄道側も駅構内での撮影を前提としていたともいえる。
なにかあったときの鉄道会社の負担から考えてみる。
駅構内で事故が発生して死傷者が発生したり、利用者の物が破損したりするようなことがあれば、鉄道会社が責任を追及されることもありうる。もちろん、駅は列車が高速で行き交う場所でもあり危険な場所であることは利用者も認識しているべき場所だから、鉄道ファンを含め駅のホームから人が転落したり触車したりして人的物的被害が生じた場合でも、鉄道会社が管理を怠っていなければ鉄道会社が責任を負わされることにはならない。
なお、車内の秩序を乱すようなことがあった場合には、鉄道営業法により係員がその旅客を車外または鉄道の敷地外に退去させることができる(鉄道営業法第42条第1項第4号)。
趣味の行為を法律で縛るのは不粋かもしれない。それはわかっている。私も今までどおり駅構内で鉄道写真を撮りたいと思っている。しかし今や、デジカメやスマホが普及して撮影のハードルが下がったからか、「撮り鉄」だけでなく鉄道趣味者でない人の撮影でも危険な行為を見ることがあり、このままでは駅構内を含めて撮影禁止場所が増えても仕方ないのでは、と危惧する。
最終更新日:4/28(水)4:31 東洋経済オンライン