東芝に買収を提案した英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズが急転直下、事実上の提案撤回に追い込まれた。背景にあるのは、続投を見込んでいた車谷暢昭前社長の辞任と、株式非公開化に対する東芝側の強い反発。当初の思惑からことごとく誤算が続き、手を引いた形だ。
CVCは19日までに、「暫時検討を中断する」などとした書面を東芝に送付。詳細提案を待ち構えていた東芝は20日、「何ら具体的な詳細情報は記載されていない」と切って捨てた。ある関係者は「提案はもう来ないのでは」と話す。
CVCが初期提案を行った6日以降、事態は混乱を極めた。続投を当て込んでいた車谷前社長が14日に辞任。車谷氏は過去にCVC日本法人の会長を務めており、その関係性に疑念を持たれたことが一因だった。
株式非公開化も見込み違いに終わる。東芝は「物言う株主」の攻勢にさらされていたが、綱川智社長は14日の記者会見で、株主との対話路線を強調。経営陣には「多くの株主に支えてもらっていた」(幹部)など上場へのこだわりも強かった。
また、CVC側の買収資金調達も難航していたとされる。さらに原子力や防衛などの事業を手掛ける東芝は、外資系の出資が厳しく制限されており、ある政府関係者は「外資が(東芝を)非公開化することにやすやすとOKできない」と話した。
今回の買収提案は、金融緩和でカネ余りの中、名門企業といえども買収対象になることを改めて示した。現に他の投資ファンドも東芝買収の可能性を探り、既存株主はより高い株価と企業価値を求め始めた。いったん開かれた「パンドラの箱」(関係者)を東芝が自力で閉じるのは容易ではない。
最終更新日:4/21(水)12:55 時事通信