「povoは集客装置」「povoフック」――。auショップを営む代理店に対しKDDIが配布している販促マニュアルには、そんな文言が並ぶ。
携帯電話大手のKDDI(au)がオンライン専用格安プラン「povo(ポヴォ)」を巡り、上記の代理店向けマニュアルで「povoを宣伝に活用して客を集め、auの大容量プラン等にその場で契約させるように」と指示していたことが、東洋経済の取材でわかった。同社の手法は景品表示法、独占禁止法、電気通信事業法に違反しているおそれがある。
東洋経済はKDDIに「povoで勧誘した客をauのプランに加入させるように指示するのは不適切では」と質問した。
するとKDDIからは、「新ブランドであるpovoを告知する目的で行っている。集客装置やフックという言葉は、お客様の関心が高いpovoについてメリットとデメリットを店頭で案内することを意味している」「お客様のニーズに合わせ、安心で大容量プランのau、データも繰り越せるUQモバイルを含めて案内し、適切に提案するよう推奨している」(広報)との回答があった。
代理店がそこまでしてauのプランを推すのには理由がある。前出のauショップ代理店の幹部は「数日でもauのプランに入ってもらえば他社からの乗り換え獲得件数にカウントされ、店の成績アップになる。すべてはKDDIの成績指標を追うためだ」と話す。キャシュバックの原資については、「KDDIではauへの乗り換え獲得1件ごとに代理店にインセンティブを出しており、1万円くらいならほぼ賄える」(同幹部)という。
KDDIとしては、auショップが「後でpovoに変えればいい」と案内した客のうち、後々povoへの移行を忘れてしまう、あるいはオンライン手続きがわからずauのプランを契約し続ける客がある程度残れば、十分に「お釣り」がくる計算とみられる。
■「官製値下げ」が生んだ皮肉な結果
加えて、KDDIが代理店に無償でpovoの宣伝活動をさせていることも問題になりそうだ。染谷弁護士は「家電量販店がメーカーの社員に無償で販売活動支援をさせ、独占禁止法違反の『優越的地位の濫用』に当たるとされた事例がある」と話す。
前述の通り、代理店はpovoへの誘導をしてもそれ自体にメリットはない。「povoフック」がKDDIの主張する、povoの純粋な宣伝や案内を目的とするものだとすれば、それはそれで、対価を支払わず代理店に支援をさせているという独禁法上の問題を指摘されかねない。
最終更新日:4/9(金)11:32 東洋経済オンライン