貨物でJALを圧倒 ANAの戦略

コロナ禍でどん底を味わうANAとJALにも、実はただ1つ増収の事業がある――。

 両社の2021年3月期の第3四半期(4~12月期)決算は、ANAホールディングスが売上高5276億円、日本航空(JAL)が同3565億円と、ともに前年同期比で70%近く減少。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、大半を占める旅客収入が急減したためだ。



 その中で唯一、増収を死守する主要事業が貨物だ。貨物事業の同期間の売上高は、ANAが1207億円(前年比16%増)、JALは909億円(同31%増)。グループ全体の売上高に占める事業構成比は、6%程度から20%超に跳ね上がった。

一方、JALは2010年の経営破綻を機に貨物専用機の運航から撤退し、旅客機の貨物室を活用した輸送に特化してきた。昨年10~12月には乗客なしの旅客機を「国際貨物専用便」として毎月1000便以上運航したものの、逼迫する需給環境に対応しきれず、需要の取りこぼしも多かった。

 ANAのもう1つの勝因は、ダイヤ外の便を設定する機動力の向上だ。航空会社では予定にない便を設定する場合、パイロットの調整や機材の整備など、他の旅客便の運航にも関わる全社的なスケジュールの修正を要する。急な貨物便の運航のために、「ちょっと悪いけど来週の予定をずらしてくれ、といったことは(コロナ前なら)ありえなかった」(ANAカーゴの外山社長)。

狙いは目先の収入だけではない。新しい空港に機材を運航させるには、到着後の貨物積み下ろしなどオペレーションに関わる準備・調整のほか、国の認可も必要となる。コロナ収束後も需要の変化を見て臨機応変にさまざまな都市へ貨物専用機を飛ばせるよう、今のうちに地域リスクを分散させる体制の構築を進めているのだ。

 成田・羽田の首都圏と沖縄を2大拠点とする戦略も軌道修正する。需要の根強い成田はアジア・中国と欧米を結ぶハブ(拠点)機能のさらなる強化を狙い、貨物専用機を集約。一方、那覇空港を拠点とする沖縄は貨物専用機の発着を全便運休する。

最終更新日:4/4(日)11:09 東洋経済オンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6389718

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