税込み表示 値上げの印象懸念

商品やサービスの価格に消費税分を含める「総額表示」が4月から義務化されるのを前に、小売店や飲食店などで値札の張り替え作業などが進んでいる。「分かりやすくなる」と消費者にはおおむね好評だが、税抜き価格を見慣れていた消費者にとっては、「値上げ」された印象を受ける可能性も。価格表示の変化は、購買行動にどう影響するのだろうか。(石橋明日佳)



 「値札を変えないと『法律違反になる』と聞き、急いで準備した」。大阪市天王寺区の登山用品店「ヨシミスポーツ」の吉見英樹代表(69)はこう話す。

 テントや登山用の衣類・靴などさまざまなグッズを扱う同店はこれまで、「本体価格+税」や税抜き価格を表示していた。総額表示の義務化を前にポップを一から作り直したが、張り替え作業は約1カ月がかりになったという。吉見さんは「税抜き表示だと、お会計で値段が上がって驚く方もいた。親切な値札になったと思う」と話した。

 義務化を機に、値下げや値上げに踏み切る企業もある。衣料品店の「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングは、税抜き価格だった値札をそのまま税込み価格とすることで、約9・1%の値下げを実施。「1990円」など、お得感のある価格表示を維持することに重きを置いた格好だ。

 一方、ハンバーガーチェーンのモスフードサービスは、軽減税率が適用される持ち帰りと、適用されない店内飲食を同じ税込み価格に改定。結果として、6割の商品で10~50円の値上げとなった。新型コロナウイルス禍に伴う持ち帰りの需要増で、紙袋などの費用負担が増えたことなども影響した。

 「9800円(税抜き価格)」といった税抜き価格だけの表示を認める特例は、平成26年の消費税率引き上げに先立ち、事業者への配慮として導入された。総額表示の義務化は、この特例措置が終了するため。違反に対する罰則規定はないが、国税庁によると、総額表示をしない値札などをそのまま使い続けていれば、指導の対象となる可能性がある。担当者は「各店の実情に即して対応してほしい」と求めている。

 消費者にとっては、実際に支払う金額が一目で分かりやすくなる。調査会社のネオマーケティング(東京)が今年3月に実施したWEBアンケートでは、8割以上が総額表示の義務化に「賛成」と回答。一方、総額表示で「値上げ」と誤解されることを懸念する事業者も多く、アンケートでは5割近くの人が「義務化前と比較し、価格が高いと感じる可能性がある」と回答していた。

 大阪市浪速区の主婦(54)は「税込み表示は分かりやすくて助かるが、割高に感じて買い控えてしまうかもしれない」と話した。

最終更新日:3/30(火)22:56 産経新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6389302

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