オフィス空室15%? 都心の未来

コロナ禍を機に、都心のオフィスビルから企業の撤退・縮小が相次いでいる。収束後に需要はV字回復するという見方もある一方で、オフィスビルの空室率が一気に跳ね上がる可能性があると指摘するのが、 不動産コンサルタントのオラガ総研(東京都千代田区)社長で「不動産激変」の著書もある牧野知弘氏だ。一体どういうことなのか。わずか「1割の変化」が重大な影響を及ぼすという今後のオフィス需要の見通しや、激変する2030年の都心の姿を占ってもらった。

現状は、年が明けたころから、大型ビルでの大型テナントの解約が目立ち始めている。リーマンショック時とは異なり、現在の大型テナントの多くは定期賃貸借契約という3年から5年間といった比較的長期の契約を結んでいる。このため期限がくるまで解約できない。テナント側からみれば今は解約したくとも、期限が来るまでは交渉すらできない。それでも、時が進むにつれて期限を迎えるテナントから順に、面積縮小や解約がだらだらと続いているのが現状だといえる。

 実際に筆者の会社がつきあっている大手企業の中には、契約満了時点で面積の縮小や拠点の集約による解約を考えている企業は多い。ただ、そのことをご親切にも現時点でビルオーナーに告知する会社は少数だ。今後テレワークを続ける部署や社員数を見極めたり、景気の動向を注視したりして、今後のオフィス計画を考えるのが一般的で、何も1年や2年後のことを今決める必要もないのである。

 現在、期限を迎える大型テナントから解約や面積縮小の動きが顕在化し始めている。報道によると、富士通が22年度末までにオフィスを半減させると発表、国内のグループ従業員8万人はテレワークを基本とし、オフィスの座席は全席フリーアドレスにするとしている。また日立製作所グループの日立オートモティブシステムズは大手町のオフィス4500平方メートルを昨年9月に半減させるなど具体的な動きも顕在化している。

戻っているように見えて、現実はそうでもないのだ。変化とはちょっとした小さなところから始まる。シンクタンクの日本総研が20年5月に、都内の従業者の1割がテレワークを実施する状態になれば、都心部のオフィス空室率は15%に跳ね上がると発表した。当時は荒唐無稽な予測だと一部から批判はあった。が、都心のオフィスワーカーが1割減れば、その分のオフィス面積を減らそうと考えるのは自然な流れだ。

 実際に通勤電車は、やはり少なくとも1割程度減っているようだ。たかが1割と思うかもしれない。が、日本総研が予測するように、「1割が行動を変える」ということは、オフィスマーケットには甚大な影響を及ぼすことになる。

 都心の賃料が高いオフィスを縮小し、浮いた分の賃料を社員の福利厚生に振り替えて社員の満足度が上がるのであれば、今までの都心一辺倒の価値観は大きく変わるかもしれない。

 ▽「無味乾燥」な東京、訪れる変化

最終更新日:3/30(火)12:54 47NEWS

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6389237

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