厚生労働省は29日、不妊治療の実態調査結果を初めて公表した。治療費は、人工授精が1回あたり平均3万166円、体外受精が同50万1284円だった。精液に精子のない無精子症の患者について、顕微鏡を使って精巣内から精子を採取する治療には同約30万円かかっていた。
調査は、政府が掲げる不妊治療の助成制度の見直しや、2022年春の公的医療保険適用に向けた基礎資料にするのが目的。不妊治療をめぐる治療法や価格などについて、20年10~12月にアンケートし、体外受精や人工授精など女性の不妊を治療する医療機関386施設、男性不妊を治療する医療機関88施設から回答を得た。
その結果、人工授精では1万~5万円、体外受精では20万~100万円と、医療機関によって価格差が大きかった。性交渉のタイミング指導や人工授精は9割以上の医療機関が実施。一方で無精子症の患者の精巣から採取した精子を使った顕微授精は約6割、将来の不妊治療のための卵子凍結は約4割と、実施機関の少ない治療法もあった。
厚労省は、治療当事者(男性625人、女性1011人)にもアンケート。治療の平均回数は体外受精で3・7回、顕微授精で2・1回だった。出産できるか不安だった男性は57・4%、女性は74・3%。治療費が不安だった男性は45・6%、女性は56・1%と、女性の方が不安が大きい傾向がみられた。
不妊治療をめぐり、厚労省は今年に入って終了した治療から助成制度を拡充。体外受精や顕微授精について1回あたり上限30万円とし、所得制限を撤廃した。【中川聡子】
最終更新日:3/29(月)18:33 毎日新聞