スシローグローバルホールディングス(GHD)が成長を続けている。2020年12月以降は全店売上高が前年同月を上回り、21年9月期は過去最高の純利益を見込む。原動力は都心部への積極出店と自動化を通じた非接触型の店づくり。衛生対策も強化して家族連れを呼び寄せる。
下支えするのがデジタル技術を活用した接客の自動化だ。スシローは人手不足に対応するため、外部企業と共同で自動化設備を開発してきた。18年には「省力化」専門部署も立ち上げた。受け付けや精算にかかる人手を片付けなどに回し、客席の回転率を高めている。
そもそもの目的は、機械化を通じた店舗の効率運営だった。コロナ禍ではこれが有効な衛生対策となり、多くの顧客を呼び寄せる。
店の入り口には持ち帰り専用の自動ロッカーを配備し、自動案内機を9月までに75%の店で導入する。会計時の混雑を避けるため、セルフレジを全店で2台体制に拡充する。食べた皿の枚数を人工知能(AI)搭載のカメラで画像認識し、支払金額を自動計算するシステムの導入も進める。
子ども2人と来店した30代女性は「感染が怖いので外食を控えているが、従業員と接する機会が少ないので安心して食事ができる」と評価する。
投資は店内に限らない。スシローは全店でスマートフォンアプリを使った座席予約システムを導入し、ピーク時には来店客の半数が利用する。アプリですいている時間を選んで来店する客も多い。大和証券の五十嵐竣アナリストは、「コロナ禍でピーク時の混雑を回避したい消費者心理も重なり、1店舗あたりの稼ぐ力は成長の余地がある」と評価する。
1皿100円(税抜き)という最低価格も柔軟に見直す。郊外と比べて高い家賃を賄うため、新宿3丁目などの都心店では、1皿20円値上げした。20年10月には「店内仕込の特大えびフライ」など1皿480円(同)のネタも提供。売り切れ続出のヒット商品になった。
最終更新日:3/30(火)9:21 日本経済新聞 電子版