歓送迎会のシーズンに入った3月以降、新型コロナウイルスの感染拡大リスクが高いとして政府が自粛を呼び掛けている「大人数の会食」が急増し始めていることが、飲食店予約データの分析で分かった。5~6人の会食は感染の「第3波」を招いた昨年末の水準を上回っている。飲食店に対する営業時間の短縮要請がなされる中、午後の間食(おやつ)の時間帯の来店が大幅に伸びるなどの変化がみられ、感染拡大のリバウンドが懸念されている。(荒船清太)
■復活の兆し
3月下旬、東京・大手町のオフィス街。若い男女6~7人のグループが、交差点を赤ら顔で歩いていた。時刻は午後8時過ぎ。会食を済ませた後とみられ、「もう1軒行こうか!」と声を上げる人もいた。
政府は、大人数の会食が感染を広げる最大の経路とみており、1月の緊急事態宣言後の対策も、この抑制に主眼を置く。飲食店には時短要請の代わりに1日6万円の協力金を支給してきた。
ただ、東京都内では3月21日をもって緊急事態宣言が解除される前から主要駅で夜の人出が増加。感染者数も上昇し始めており、軌を一にするように、大人数での会食も増えている。
全国の飲食店に予約管理システムを提供する「トレタ」(東京)の契約店舗約4000店の来店人数について、感染拡大前の平成31年1~3月と、2度目の緊急事態が宣言された今年1~3月とで比較すると、宣言解除直前の3月15~21日の5~6人以上の会食は、平成31年同時期の5割。2割前後だった今年1月の宣言発令直後と比べて大幅に増加した。
第3波の一因とされている忘年会などの会食の機会が増えた昨年12月は、ほぼ5割を下回っており、その水準を上回っている。
また、宣言後は一時、1割を割り込んでいた7~8人の会食についても、解除直前には4割近くに。宣言後の一番低いときには5%まで落ち込んだ11人以上の集団会食も、14%まで回復しており、復活の兆しがみられる。
首都圏の1都3県に限ると、他地域よりは自粛傾向がみられるものの、1月下旬ごろから増え始め、3月15~21日は5~6人の会食が3割強となっている。
■おやつも急増
大人数での会食が元に戻り始める一方、会食のスタイル自体にも異変が生じている。
トレタのデータによると、昼食(午前11時~午後3時)、おやつ(午後3~5時)、夕食(同5~8時)、深夜食(同8時~翌午前0時)の各時間帯の予約来店人数は、昨年末ごろまではいずれも同じように増減を繰り返していたが、緊急事態が宣言された今年1月7日以降は、夕食帯に比べ、おやつの時間帯は急増しており、3月15~21日には時間帯として唯一、平成31年の同時期を上回る126%となっている。
政府は、新型コロナの感染を広げやすいとして昨年は飲み会などの夜間の会食、今年はランチも含めて強く自粛を呼び掛けてきたが、昼食や夕食を自粛した客が、おやつの時間帯に流れ込んでいる可能性がある。
ただ、菓子やお茶であっても、会食相手と話すたびにマスクを付けたりナプキンで口を覆ったりしない限り、飛沫(ひまつ)が飛び、感染リスクが高まるのは昼食や夕食と同じだ。実際、昨年末には山口県で、お茶会によるクラスター(感染者集団)が発生している。
徐々に増えている会食は、どこまで感染のリバウンドを招くのか。今後の感染状況によっては、政府や自治体が再び飲食への「引き締め」を迫られる可能性もある。
最終更新日:3/29(月)1:15 産経新聞