駅前開発 コロナで進む二極化

2020年、JR宇都宮駅やJR西日暮里駅が、十分な集客が見込めないという理由で、相次いで再開発の見直しを行った。人の移動が減少するなどコロナ禍に起因する人々の生活様式の変化は、駅前の都市開発にどのような影響を与えるのか。(清談社 武馬怜子)

● コロナ不況で 駅前再開発を見直し

 昨今の駅前開発で何が起きているのか。不動産市場に詳しいニッセイ基礎研究所・金融研究部准主任研究員の佐久間誠氏に解説してもらった。

 「今回のコロナ禍では、ホテルやイベント施設などが大きな打撃を受けました。その影響で開発計画の見直しを迫られるものも出ています」

 駅前ではないが、札幌の中島公園近郊に(国際会議や展示会などに使う)MICE施設を建てるという開発計画も再検討になった。

 少なくとも10年以上かけて計画され、数十年先を見据えて練られた駅前開発計画が、コロナ禍の引き起こした不況によって見直しを余儀なくされてしまったというわけだ。

 ただし、すべての計画が見直しを迫られているというわけではない。

● アフターコロナの 駅前開発はどうなるか

 とはいえ現在の都内ビジネス地区におけるオフィス平均空室率は、2020年2月の1.49%から11カ月連続で上昇しており、今年1月時点で4.82%までになっている(三鬼商事・2021年1月調べ)。

 その一方で、22年に着工予定の新宿駅西口の再開発など、大規模な事業は今のところ予定通りだという。

 「都市開発は、かなり長いスパンで行われますからね。新宿駅西口の再開発に関しては、竣工は29年度を予定しています。その頃にはコロナが収束していることが予想されます。コロナ禍を経て変わるものもありますが、変わらないものも多くあります。

 今後も、集積の効果が大きいサービス業を中心として、駅前のオフィスを選ぶ企業は多いと思います。IT企業やコンサル系の企業などはリモートワークとの親和性が高いといわれておりますが、そのようにオフィスを生産現場として活用し、オフィスでイノベーションを生み出すことが求められる仕事をする業界ほど、むしろ駅前にオフィスビルを構えることが重要なのではないでしょうか」

 逆に、生産現場が別の場所にあるような製造業で、管理・事務部門をあえて駅前に置いてきた企業などは、オフィスを工場の近くなどの場所に移転することも可能だろう。

 では、コロナが収束した後の駅前開発は、どのようになっていくのか。

 「これからの駅前開発は、二極化されていくと思います。ひとつが、新宿や渋谷などの大都市の駅前開発。これまで通り現在の最新技術を使って利便性を追求する方向でどんどん進められるでしょう。もうひとつは中小規模の駅の開発で、こちらはより街の特徴を生かす方向になっていくのではと考えられます」

 小規模の開発として有名なモデルケースがJR立川駅や京成ユーカリが丘駅だ。

 立川駅は一昔前の米軍基地としての閉鎖的な雰囲気を一変させ、駅前に芸術作品や憩いの場をたくさん作り、多摩地域を代表する駅として発展している。ユーカリが丘駅は不動産会社「山万」が開発に携わっている。山万のすごいところは駅に自社の鉄道や警備会社を作り、街を一からつくり出したこと。どちらも駅前開発の可能性を示唆している。

 駅前開発で大切なのは、その駅にしか出せない強みや地域性をいかにして引き出すかというアイデアだ。

 コロナ禍に限らず、経済状況や行動様式の変化に左右されない都市づくりは、正解がないだけに本当に難しいもの。10年先、20年先を見据えた駅前開発をどのようにしていくのか、今も模索が続けられている。

最終更新日:3/17(水)22:01 ダイヤモンド・オンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6388060

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