コロナでも黒字 鉄道各社明暗

JR上場4社と大手私鉄15社は2月下旬から3月上旬にかけて第3四半期決算を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、中間決算に引き続いて各社とも大幅な減収減益となった。しかし、第3四半期だけで見ると黒字に転換した事業者も出始めており、コロナ禍による事業環境の悪化は底を打ちつつある。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)



● JR上場4社の中で 最終黒字はJR東海のみ

 JR上場4社の中で唯一、第3四半期(10~12月)のみを切り出してみたときに最終黒字となったのがJR東海だ。同社は収入の約7割を東海道新幹線の運輸収入に依存しており、関連事業の比率も小さい。そのため「新幹線一本足打法」のJR東海が新型コロナの影響を最も受けるのではないかとの見立ても多かった。

 実際、最初に緊急事態宣言が発出された2020年度第1四半期(4~6月)はJR東日本の約1554億、JR西日本の約767億円に対して、JR東海も約727億円の純損失を計上したが、第2四半期(7~9月)は約409億円の純損失に縮小。さらに第3四半期は約21億円の純利益を計上するに至った。

 東海道新幹線の対前年比輸送量を見ると、第1四半期に84%減だったのが、第2四半期には68%減、第3四半期は55%減まで回復しており、GoToトラベルキャンペーンをはじめとする利用促進策の効果が出ていたことが読み取れる。

一方で、京急は約37億円、京成は約25億円、南海は約17億円の営業赤字を計上しており、航空需要の落ち込みにより、空港輸送を担う3社が引き続き減収に苦しんでいることも浮き彫りとなった。

 運輸事業の営業赤字が最大となったのは東京メトロだ。東京23区を営業基盤としていることから緊急事態宣言発出の影響を最も強く受けており、定期券利用者、定期外利用者ともに前年比30%近い大幅な減少を記録。同セグメントで約55億円の営業赤字を計上した。

● 名鉄と西鉄は 物流部門が下支え

 大手私鉄各社の足かせとなっているのがレジャー事業(レジャー、ホテル、リゾートなどを含むセグメント)だ。営業赤字が最大となったのがプリンスホテルを擁する西武HDで約111億円、近鉄GHDが約68億円で続き、東急は約46億円、東武も約43億円の営業赤字を計上している。

 各社とも運輸事業、レジャー事業をカバーしているのは、引き続き堅調な不動産事業だ。この傾向は第1四半期、第2四半期から変わっていない。ただ、今回注目したいのは名鉄と西鉄の物流部門の貢献である。

 名鉄運輸などを傘下に持つ名鉄の運送事業は、第2四半期まで売上高、営業利益とも前年を下回っていたが、物流の需要回復や運賃単価の上昇に伴う販売価格の見直しにより第3四半期で見ると、前年同期比約29%増の約20億円の営業利益を出して黒字化に貢献した。

 また西鉄運輸や西鉄物流を傘下に持ち、国際物流事業を直営する西鉄は、第1四半期こそ新型コロナの影響で輸入取扱高が減少したが、需要の回復と航空運賃原価の上昇に伴う販売価格の見直しにより第2四半期以降は増益となり、第3四半期の営業利益は前年同期比約3億円増の11億円となった。

 四半期ごとの推移を比較してみると、一部の事業者を除き、コロナ禍による事業環境の悪化は底を打ったようにも思える。今回の緊急事態宣言の再発出では、新幹線や特急など中長距離利用者は再び大きく減少した一方で、定期利用者と近距離の定期外利用者は前回ほどの落ち込みは見られない。ただ、業績が回復基調に転じるにはまだ時間が必要で、しばらくは一進一退の持久戦が続くことになりそうだ。

最終更新日:3/15(月)13:55 ダイヤモンド・オンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6387786

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