東日本大震災の発生からまもなく10年となる。政府は、震災直後の2011年度からの5年間を「集中復興期間」、さらにその後5年を「復興・創生期間」として集中的な復興事業を推進し、再建に向けた取り組みが進められた。
その一方、震災による影響は津波により壊滅的な被害を受けた東北3県の太平洋沿岸部から始まり、国内サプライチェーンの寸断、相次ぐ自粛、東京電力福島第一原子力発電所事故による風評被害、取引先の被災による販路の喪失などで直接的に被害を受けなかった企業にも波及して全国各地に拡大。その結果、10年を経た今もなお東日本大震災の影響が残り倒産に至るケースも発生しており、震災により苦境に陥った企業の“復興”には厳しい道のりが続いている。
ただ、震災関連倒産のうち地震や津波による建物の倒壊・喪失など「直接被害型」の倒産が占める割合は、震災直後に比べて大きく高まっているのが近年の傾向として挙げられる。1年目の9.2%から5年目以降急速に拡大し、ピークとなる8年目には全体の半数超(56.1%)を占めたほか、10年目でもなお4割を占めた。震災を乗り越え、グループ補助金など政府・自治体の経営支援も活用して工場や事業所などハード面は再建したものの、取引先の廃業、需要の低迷などで売り上げが当初の想定よりも下回ったことで次第に資金繰りが苦しくなり、最終的に経営が破綻するケースが多く、震災がもたらした影響は10年を経た今でも企業経営に色濃く影を落としている。
こうした要因も背景に、東日本大震災関連倒産は発生から10年、120カ月連続で発生し続けている。
10年間累計の業種細分類別トップは「ホテル・旅館」(134件)となった。地震・津波による宿泊施設の流失や損壊、観光客減少による客室稼働率の低下などを受け、借入金の返済猶予など資金繰り支援を受けつつも抜本的な収益環境の改善には至らず倒産に陥るケースが多く、震災から10年を経てなお多く推移している。
以下、荷動きや取引先の減少などに見舞われた「一般貨物自動車運送」(51件)、震災直後の資材調達難といった影響を強く受けた「木造建築工事」(50件)、特に被災地の主力産業である一方、不漁や需要低迷などで業況の回復が鈍い「生鮮魚介卸」(38件)などが続く。
最終更新日:3/8(月)14:13 帝国データバンク