新型コロナウイルスの感染拡大に伴い首都圏1都3県に発令された緊急事態宣言が2週間延長されることが決まった。営業時間の短縮要請が長期化している飲食店は落胆し、取引先の卸業者の苦悩も深まっている。飲食関係に限らずさまざまな業種が苦境にあえぐ中、「この2週間で本当に終わるのか」と、不安も広がる。(本江希望)
「1カ月なら仕方ないと思ったが、1カ月延び、さらに2週間。今後もどうなるか、正直分からない」。東京都新宿区の居酒屋「和創作 空 Kuu 西新宿」の門倉和幸店長(41)は、ため息をついた。
コロナ禍で売り上げは最大で9割減った。飲食店への支援策「Go To イート」で一時はコロナ前の水準に戻ったが、1月の緊急事態宣言を受けて「人件費や光熱費などの経費を考えれば、まだ痛みが少ない」と休業を選択。今月7日の期限が明けた翌8日から、営業を再開する予定だった。
昨年10月に申請した小規模事業者向けの補助金はまだ審査がおりず、受けられるかどうか決まっていない。1年前に借り入れをし、追加融資を受けることも考えているというが「借金だけ増えて結局(経営が)ダメになったらと思うと…難しい」。資金繰りへの不安は消えない。
長引く時短要請は、飲食店と取引する業者にも影を落としている。
大田区平和島にある青果卸「ベジクル」代表、岩崎亘さん(37)は「取引先の閉店も徐々に増えており、売り上げは3~4割減った。このままでは厳しい。飲食店だけでなく、卸業者への支援もしてほしい」と訴えた。
「ワクチン接種が始まったのが一筋の光明だが、(再延長の)2週間は最後の我慢。この後、また再び延長となれば、状況は変わってくる」。新宿区高田馬場の酒卸問屋「佐々木酒店」代表の佐々木実さん(66)は不安を口にした。同店では、8日の解除に備えて酒類を仕入れていたという。
豊洲市場の事業者で組織する「東京魚市場卸協同組合」の広報担当常務理事、難波昭信さん(60)は「時短の影響は大きく、非常に頭を悩ませている。売り上げという数字以上に、精神的な部分でのダメージは大きい」と長期化による影響の大きさを語る。
宣言継続による自粛ムードが続く中、飲食店以外の業種の苦境も深刻だ。
銀座にある美容室「LOCCA(ロッカ)」は、昨年春に拡張移転したが、コロナで売り上げが激減。代表の木村佳史さん(40)は「クラウドファンディングで支援を受けて切り抜けたが、昨年の利益はゼロ。徹底した消毒などコロナ対策の費用もかさんでおり、支援を拡充してほしい」と訴える。
テレワークや時短営業で需要が減っているタクシー業界も痛手が続く。都内のタクシー会社に勤める男性(51)は「深夜勤務を減らすなど工夫しているが厳しい状況。生き残ることができない会社も増えてくるのではないか」とため息をついた。
最終更新日:3/5(金)21:23 産経新聞