コロナ禍で観光業界は大きなダメージを受けている。とりわけ国内の有名な観光地は観光客の数が減少し、シャッターを閉める店や廃業せざるを得ない老舗企業が出始めている状況だ。
そんななか、1世紀以上にわたって“京の美意識”をモットーにしてきた「よーじや」は老舗ブランドの意地をかけて、この苦難を乗り越えようとしている。今回は株式会社よーじや 営業企画部 部長の入江裕司氏に、先の見えないコロナ禍を生き抜くための事業展望について話を聞いた。
そんな社会背景のなか、入江氏は「とある雑誌にて『あなたのバッグの中身を見せてください』という企画が、あぶらとり紙の認知度を広めるきっかけのひとつになった」と語る。
「特に我々から依頼したわけでもなく、雑誌に出る女優の方がバッグによーじやのあぶらとり紙を忍ばせていたんです。そこから、“芸能人御用達”という形で話題となり、全国から問い合わせがくるようになった」
また、時を同じくして4代目社長の國枝泰博氏(現よーじやグループ 会長)は“よーじやブランド”の確立をすべく、隆盛の礎となる事業基盤づくりを行った。
「戦後しばらく中止していたオリジナル商品の開発や販路拡大などを再開しました。これまで京都を中心に展開してきましたが、全国のお客様にも京都の化粧文化や、よーじやの魅力を伝えたい想いから、百貨店への催事出店を始めたんです。
当時、化粧品売り場の坪効率が日本一だった阪急梅田への出店を皮切りに、全国へと催事販売を広めていきました。主力のあぶらとり紙を中心にオリジナル商品も合わせて販売し、また『京都ブランドの伝統感』が伝わるような売り場づくりや接客サービスを意識したことで、口コミが広がり、大きな反響を得ることができました」
また、売上の半分を占めるあぶらとり紙に頼るのではなく、第2、第3の事業の柱を作るため、化粧品やカフェといった事業の多角化を行ったという。
「よーじやでは『化けるためのものではなく、美しくよそおうためのもの』という思いから、“化粧品”ではなく“美粧品”と称しています。あぶらとり紙はあくまでメイクの一部であり、ほかにもポーチの中身にふさわしいアイテムを見出せないかと新展開を考えたんですね。そこから、基礎化粧品『うるおいぷらす』や、伝統的な化粧小物、口紅などの『よーじや 粧具』を発売しました。ものづくりにかける情熱や京都の化粧文化を未来に伝えたい。そんな願いを込めての新しい挑戦でした」
さらには、京都を訪れる観光客やインバウンド向けに「京都で培ったおもてなし」の提供、そして「京みやげ」によーじやの商品を選んでもらうために、カフェや空港免税店の出店を敢行した。
「京都は観光シーズンになると大勢の観光客が訪れます。当時京都にはよーじやのブランドショップが2店舗しかなかったので、ハイシーズンは混雑必至でした。そこでお店が混んでいる時間に、お客様がゆったりと寛げる場所を作りたいと思ったことが、カフェを始めた経緯になりますね。また、空港免税店は外国人のお客様にも商品を手に取ってもらうために出店し、現在では羽田空港と成田空港に構えています」
2020年4月には5代目の國枝昂氏に社長が引き継いだ。まだ31歳と若く、よーじやの未来を担う新しい経営者の誕生に周囲は期待を寄せる。今後の展望について入江氏は「伝統を大切にしながらも、商品の魅力をより多くのお客様に届けられるよう努めたい」とし、意気込みを語った。
「社長が変わったことで、今は転換期だと捉えています。観光業の使命としては、少しでも早く感染拡大を抑えること。観光シーズン到来に向けた準備期間として英気を養いたい。また、新社長の『発想力』や『行動力』をもとに伝統を大切にしながら新たな取り組みも模索したいと思っています。
ここ2年くらいをかけて『新しいよーじや』を創る体制はできてきたので、アフターコロナに向けた『Made in Kyoto』のブランド力の強化を図るべく尽力していきたい」
時代を越えても人々を魅了する京都の伝統。その誇りにかけて、よーじやは困難に立ち向かうことだろう。今後の発展に期待したい。
<取材・文/古田島大介>
最終更新日:3/3(水)11:01 bizSPA!フレッシュ