東京都中野区にちょっと変わった古着店がある。24時間営業で店員がいない店、その名も「ムジンノフクヤ」。商品選びから試着、精算まで人と接触せずに完結できることから、密を避けて買い物ができる店として話題になっている。2020年8月にオープンし、開店1カ月目から黒字を達成。現在も月に約300人が購入しているという。
店内には国内ブランドの古着を中心に、500~5000円の商品約300着をそろえている。コロナ禍で実証実験が進む「無人コンビニ」などとは異なり、店の仕組みは至ってシンプルだ。商品に値札はついておらず、白は500円、グレーは1000円などと、ハンガーの色で価格を示している。清算は「500」「1000」などと金額が書かれた券売機でチケットを購入する形式を採用している。
ムジンノフクヤを運営するのは、マッサージ店などを経営するdharman(ダルマン、東京都文京区)。全く畑違いの業界だが、代表の平野泰敬氏は「オープンの1年程前から構想していた」と話す。
これまでネットで古着販売を行っていた平野氏。アマゾンが米国でレジ無しコンビニ「Amazon Go(アマゾン・ゴー)」の展開を開始するなど、無人販売が注目を集める中「これからは無人販売の動きが加速する」と考えていたという。しかし、コスト面や防犯対策などのリスクを考え、出店については二の足を踏んでいたと話す。
そんな中、世界中で猛威を振るうことになった新型コロナウイルスの感染拡大。人々の生活様式は急速に変化し、人との接触を減らす行動が求められるようになった。今であれば「非接触」のニーズに応えられると判断し出店を決意したという。
店内には複数の防犯カメラを設置。撮影した動画を店内のモニターに映してお客に見えるように工夫した。また、道路に面する壁もガラス張りとなっていて、外からも店内の様子が分かるようにした。このような対策で万引き被害に遭いにくく、仮に被害があってもすぐに犯人を特定できる環境をつくった。
無人店舗で考えられるもう一つのデメリットは、お客と直で会話ができないため、利用時の反応など「リアルな声」を聞くことができない点だ。その解決策として同店では、お客が自由に書き込める「連絡帳」を設置。店を利用した感想や要望、お店からの案内などを書き込めるようにした。
連絡帳には「久々に来ました」「商品を購入しました」「外国語表記の案内板も設置してほしい」などといったお客の声が記されている。店側もその全てに返信を書いていて、コミュニケーションの場となっているようだ。
実際に連絡帳の声を参考に改善した部分もある。それが、試着室へのフェースカバーの設置と、店舗入り口に鈴をつけたことだ。入り口の鈴は「試着室に入っている時に、別の人が入店したか分からず不安」という声を参考にした。平野氏は「無人で運営しているからこそ、店舗への要望をお客様から聞けるツールになっている」と話す。今後は連絡帳の中でも要望が多かったメンズ商品の拡充も検討しているという。
最終更新日:3/1(月)11:41 ITmedia ビジネスオンライン