今年で発売45周年を迎える『フルーチェ』。牛乳と混ぜるだけでプルンと食感のスイーツが作れる手軽さから、幅広い世代に愛されている。現在放送中の大人に特化したCM「禁断のフルーチェ」がSNSを中心に話題に。世代を超えて愛されている同商品も、開発までに様々な苦労があったとか。45年前の開発秘話や今回のCMについてなど、ハウス食品の食品事業二部 チームマネージャー・山田亨さんに聞いた。
■生クリームアレンジは公式発信 魅惑のナレーションも話題に
――牛乳だけでなく生クリームも合わせて作る「禁断のフルーチェ」ですが、SNSで以前から話題になっていましたね。発案者はどなたでしょうか?
【山田亨さん(以下、山田)】弊社にも昔から「フルーチェムース」という牛乳と生クリームで作るレシピがありました。ファンの方を集めたイベントでこのレシピを紹介する取り組みを行ない、徐々にSNSでも話題となり、テレビでも取り上げていただいたことがあります。
――今回「禁断のフルーチェ」と称して、CMにした経緯を教えてください。家族には内緒で大人がこっそり食べるちょっぴり背徳感のある様子がうかがえる内容が印象的です。
【山田】うっとりするような濃厚で魅惑的なおいしさをストレートにお伝えしたいと思い、今回の表現にトライしました。『フルーチェ』は「子ども向け」というイメージが強いのですが、生クリームを活用したレシピをお客様に調査したところ、大人の方が自分のために作っていることがわかりました。かつて『フルーチェ』を食べていたお父さんお母さんにも、もう一度食べていただけるのではないかと考えCMを作りました。
――視聴者からはどんな反響がありましたか? Twitterでは、別の声優さんによるバージョンのキャンペーンもありました。
【山田】「やってみたい」と興味を持っていただける投稿から、「このおいしさにはやられました」「もう(牛乳だけの『フルーチェ』には)戻れない」と実際に喫食いただいた投稿がみられました。さらに、CMのナレーターに起用した若本規夫さんや、Twitterキャンペーンの声を担当してくれた下野紘さん、浪川大輔さんへの好意的な反応も散見されました。
――1976年の発売から45周年となりましたが、開発するきっかけはなんだったのでしょうか?
【山田】当時ハウス食品からは『プリンミクス』や『ゼリエース』といったパウダーから作るデザートが発売されていました。このパウダーデザートは「親が作り子どもに与える」というシーンを想定して作られた商品ですが、『フルーチェ』は、親子で火を使わずに一緒に作ったり、子どもだけでも作ったりできるデザート製品を発売しようと開発が進められたようです。
――『フルーチェ』の名前の由来は?
【山田】果物の風味があるという由来の「フルーティー」と、イタリア語でお菓子や甘いものを意味する「ドルチェ」を合わせた造語です。
――パウダーデザートとしては先発品があったようですが、子どもでも混ぜるだけで簡単に作ることができるデザート製品というのは画期的だったのではないでしょうか。開発秘話があれば教えてください。
【山田】発売を1年延期したという資料が社内に残っています。『なめらかな口当たり、きれいな固まり具合、牛乳と果実の一体感』が完成のイメージだったようですが、うまく固まらないことや目標とするなめらかさが表現できずに、非常に苦労したようです。
――試行錯誤があったんですね。発売当時の反響はいかがでしたか。
【山田】当時はまだまだ缶詰が一般的であり、パウチの形状には抵抗感を感じる方もいるのでは? と思われていましたが、発売すると売り上げ計画の約3倍の実績となり、原料調達に苦労したと聞いています。
■作る・食感・シーン…すべてが思い出に 体験こそが『フルーチェ』
――これまでにたくさんのフレーバーも登場していますが、人気のある味を教えてください。
【山田】イチゴは不動の1番人気です。ミックスピーチも幅広く支持をいただいています。過去には、りんご、キウイ、ぶどう味など20種類以上のものがありました。
――45年変わらない商品パッケージも世代を超えて親しまれている理由ではないでしょうか。
【山田】味やパッケージは、時代やトレンドにアジャストさせるイメージで変えています。また、『フルーチェ』の持つ「元気」「楽しい」のイメージを表現するために、牛乳を入れたときの動きをつけたミルククラウンをデザインしています。
――『フルーチェ』が長きにわたり、消費者に愛されているワケはどこにあると考えますか?
【山田】作って食べた方の“良い思い出”になっているのでは? と考えております。作る工程にある「牛乳を入れて混ぜる行為」、「プルンとした食感」は、『フルーチェ』ならではの体験です。その体験がお客様の心の中に残っていて、思い出せる記憶になっているのだと思います。ふとした瞬間に出会うと、どこか懐かしくほっこりする。兄弟や姉妹で『フルーチェ』を取りあったことを思い出して、今は、自分だけで大人食べをしているエピソードなどもいただきます。
――最後に『フルーチェ』を通して取り組んでいきたいこと、今後の展望を教えてください。
【山田】お子さんと一緒に『フルーチェ』を作る体験を、これからも「家族の思い出」として残していきたいです。お母さんとお父さんと一緒に作って、一緒に食べる。そんな思い出と共に大きくなった子どもが、今度は自分の子どもたちとやりたくなる。そんな存在であり続けたいと思います。そして、大人自身も満足できるようなデザートにしていきたいです。「禁断のフルーチェ」は、お子さんもきっとハマると思いますので、ぜひ親子で一緒に試してみてくださいね。
最終更新日:3/1(月)20:25 オリコン