東急が2021年2月16日(火)から、「新しい通勤の形」を実験しています。シェアオフィスバス「Satellite Biz Liner」です。
コロナ禍を背景にテレワークの普及など移動や働き方が変化するなか、走り出したバスで、「通勤時間を勤務時間にする」というのがポイントです。かんたんにいうと、8時間の勤務時間を、通勤バス往復車内で2時間、オフィスで6時間にしよう、というものです。通勤時間が業務時間になるため時間に余裕ができ、家族との時間などが充実するといいます。
実際に、東急田園都市線のたまプラーザ駅(横浜市青葉区)から渋谷駅まで、そのバスへ乗車してみました。
渋谷駅までの走行距離は20km弱。たまプラーザ駅9時05分発であるため、東名高速などの渋滞を想定し、渋谷駅到着は10時15分というダイヤで、所要時間70分ですが、この渋滞を逆に活かしています(なお、バスの終点は10時45分着の東京駅)。
たまプラーザ駅から渋谷駅まで、電車だと朝時間帯の所要時間は30分程度。業務時間としては、短くて慌ただしいです(そもそも、全車ロングシートであり、混雑している朝の渋谷方面行き田園都市線車内で業務できるか、という問題もありますが)
これに対し70分という時間は、長すぎず短すぎず、といった印象。業務時間になるなら、通勤時間が多少長くなっても問題ありません。たまプラーザ駅ではタリーズコーヒーの割引サービスも用意されており、バス車内ながら、コーヒーの香りが鼻腔をくすぐる朝の仕事始めです。
また、用意されていたYogiboの「Traybo2.0」も印象的でした。一般的にバスはテーブルが小さいですが、これは足の上をテーブルにすることが可能。安定してパソコンが利用できました。もちろんバスにはWi-Fiも用意されています。
「DENTO」ではこのほか、通勤定期券所持者を対象に「1日乗り放題100円チケット」や相乗りハイヤー、クーポンの配布などを実施。またグループの東急でんき&ガスでは「定期券割」も行われています(誰でも使えるサービスもあり)。
いわば東急線の通勤定期券所持をサブスクリプション的に考え、それに“入会”していれば、様々な割引きや利便性を受けられる、という具合です。
「Satellite Biz Liner」を使う場合、定期券に+αで支払うことになりますが、東急の森田課長は「これから先、企業の福利厚生も多様化していくと思われるなか、多様な移動の仕方を認めていただいたり、また東急と企業が契約したりする形もありうるのではないか」と話します。
「DENTO」は、そうした様々なサービスを提供することにより、東急沿線で暮らすこと、そこから通勤することの魅力を高める実験でもあります。
日本の私鉄は古くから、「鉄道」を軸に「生活」に関わる多様な業態へ展開するビジネスモデルで、東急はその象徴的な企業です。
コロナ禍で「鉄道」が、「生活」が大きく変わりゆくなか、そんな東急がグループ力を活かしてどう変化し、「鉄道」と「生活」について新しい価値観を提供していけるか、大いに注目されるところでしょう。
最終更新日:2/28(日)20:54 乗りものニュース