びっくりドンキー 薄肉原点は

コロナ禍の自粛生活が1年になった。

 厳しい状況のなか、第一線で患者と向き合う、医療従事者の方の献身的な取り組みには感謝し、敬意を表するが、一般生活者の間では「自由への渇望感」を強く感じる。



 仕事柄、そんな市井の人の現在の生活を聞くことも多い。よく耳にするのが、「コロナが落ち着いたら、外で楽しくごはんを食べたい」という本音だ。外食業界が厳しいご時世だが、「自宅ではできない味と雰囲気を楽しみたい」思いは強い。

 そこで「びっくりドンキー」(本社は北海道札幌市。愛称は「びくドン」)の事例を紹介しよう。

 同社は「全国のおいしいハンバーグ・ステーキ店」の人気ランキングでも常に支持を集める企業系チェーン店。2月に発表されたばかりの「2020 年度JCSI(日本版顧客満足度指数)」では、飲食業界において全24企業中1位に輝いた。

 本稿の担当編集(1989年生まれの男性編集者)も「他のチェーン店が肉厚のハンバーグが多いのに比べて、ペラペラなのになぜか美味い」と語る愛好家だ。人気の理由は何か。

 店舗ブランドを運営する株式会社アレフに聞き、こだわりの秘密を探ってみた。

びっくりドンキーは、競合のハンバーグチェーン店とはひと味違う。

 まず、料理は1つの皿にライスやサラダを盛り合わせたワンプレートで提供される。鉄板での提供もできるが、注文数は少ない。「常連のお客さまほど、ワンプレートで頼まれます」(松本さん)。

 「びくドン」の顔とも言えるディッシュ皿は、一緒に盛られた肉・ごはん・サラダが混ざらないように工夫されていると耳にしたが、本当だろうか。

 「本当です。お皿を触ってみるとわかるのですが、まっ平らではなく真ん中が盛り上がっています。外側にソースが逃げていく構造になっているのです」

 ここで前述の疑問を思い切ってぶつけてみる。「ペラペラでも美味しい」理由は何か。

 「まず原料へのこだわりです。ハンバーグの原料は牛肉と豚肉の合い挽き肉です。牛肉は、2001年からびっくりドンキー専用のナチュラルビーフを使用。ニュージーランド南島とオーストラリア・タスマニア州契約生産者の指定牧場で、伸び伸びと放牧飼育された牛です。豚肉もストレスの少ない環境で育てられた豚です。専門的な言い方では、抗生物質や合成抗菌剤の使用を制限されたポークを使用しています。

 確かに手ごねハンバーグと比べると薄いかもしれませんが、味は自信を持っています。また箸で切れやすい点も好評いただいています。

 焼き方も工夫しており、味付けは、しょうゆベースなので日本人に合う味にしています。ハンバーグソースのレシピは厳格に管理されており、社内でも数人にしか明らかにされていない。私も知らない門外不出の味なんです」

 時代とともに、味付けは少しずつ調整される。SNSでは個人が作った「びくドンのレシピ」が公開されているが、本当の味付けはトップシークレットだ。

「びっくりドンキー」は、さまざまな料理を出す総合型ではなく、ほぼハンバーグに特化した専門店だ。経営の視点では、総合型に比べて以下のメリットがある。

 (1)長年の店舗運営経験により、毎日の出食数がある程度見込める
(2)飲食の提供や接客など、従業員のトレーニング期間が短くできる
(3)冷蔵庫や調理器具など設備投資が最小限ですむ

 それぞれ簡単に補足しよう。(1)は、日本人の国民食であるハンバーグに特化したため、食材ロスが少なくてすむ。

 (2)は、ハンバーグ中心なので複雑な調理手法を求められない。全国に8カ所ある工場で一次加工しており、店舗での調理作業もより簡略化されている。前述したワンプレートは、お客さんは食べやすく、店側の立場では皿を洗う枚数が少なくてすむ。

 (3)についても、特化型なので食材の保管場所や調理器具といった厨房施設が最小限ですむ。前述した「居抜き」物件への出店も含めて、初期の設備投資費用が抑えられるのだ。

そうはいっても、コロナ禍で外食が厳しいご時世。株式会社アレフの業績はどうか。

 「会社全体では、対前年比で約85%です(2021年2月末時点)。最初に緊急事態宣言で人出が減った昨年4月は同43%。ただそこが底で、5月以降は回復し、6月には80%台に。8月には見合わせていたCMも再開し、10月、11月には110%にまで回復しました。

 もちろん、安心はできません。売り上げを確保するため、テイクアウトやデリバリーも整えてきました。コロナ禍で支持を受けたのがハンバーガーやピザ、そしてお寿司。配達されやすい形式も考えています」

 びっくりドンキーの成り立ちを聞いていて、興味深かったのが「前身はハンバーガーの店(店名は「BELL」=ベル)だった」こと。マクドナルドの日本上陸(1971年)以降、主力メニューを「ハンバーガーからハンバーグランチに変えた」という。

 「言ってしまえば、ハンバーガーを分解して、パンをご飯に変えて、一つの皿に盛ったのが『バーグディッシュ』なんです」

 なるほど。「薄い形の肉はハンバーガーが原点」と知り、納得した取材班だった。それなら「デリバリーやテイクアウトで、もっとできること」もありそうだ。

最終更新日:2/28(日)11:46 現代ビジネス

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6386330

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