手軽に購入できる「コンビニコスメ」。これまでは「緊急時に手軽に使えるスキンケアアイテム」が多く、近年はこうしたニーズを汲んで、メーク落とし、洗顔料、化粧品、保湿クリームなどが個包装の状態でそれぞれ入った「トラベルセット」を取り扱うコンビニが定番化してきた。そんななか、コンビニコスメは益々進化を遂げているという。(清談社 鶉野珠子)
● コンビニ独自の商品で ドラッグストアと差別化
急な外泊のとき、旅行先に持っていき忘れたとき、真夜中に化粧品を使い切ってしまったときなど、「緊急時に購入するスキンケアアイテム」というイメージが強かったコンビニコスメ。
ところが近年、その立ち位置が変わりつつある。アイシャドーやマスカラ、チークといったメーキャップアイテムが充実し、「コンビニでしか買えないコスメ」を求めて来店する客も増えてきているという。
● 化粧品メーカーだけでなく コンビニにも大きなメリット
メーカーとしては、コンビニに自社の限定コスメを置けば、通常販売しているコスメへ客を誘導することができる。さらに新商品の開発に向け、コンビニの客層から得られるデータも大きい。ブランドへの新規客層づくりと、普段取れないデータの収集ができるという点に、企業がコンビニ限定コスメを開発する理由が見いだせるだろう。
では、コンビニ側のメリットは一体なんなのだろうか。
「コンビニは、コスメに限らず日用品の利益率が高いです。しかもコンビニの客単価に合わせた価格設定のコスメであれば、何らかの『ついで』に買ってもらうこともできる。反対に、コスメを主目的として買いに来た人でも、スイーツや飲料、雑誌などを組み合わせた関連販売ができるメリットもあります。コスメを取り扱うことは、コンビニ側としてもスケールメリットがあるのです」
コンビニの客層の男女比は、現状6:4と男性のほうがやや多い傾向にあるという。コスメを置くことで女性客を獲得し、一緒に購入されているアイテムから女性に好まれそうな商品を分析することもできるのだ。
「メーカー側はコスメを取り扱っている専門店とは異なるデータを収集でき、コンビニ側はサンプルが少なかった女性客のデータが収集できるという点で、双方に大きなメリットがあるといえます」
とはいえ、すべてのコンビニ店がコスメの恩恵を受けるわけではない。立地による格差もあるそうだ。
「ビジネス立地だと、『軽食を買うついでに、気になっていたコンビニコスメも試してみようかな』と考える、所得に余裕のあるビジネスウーマンもいて、回転が早いのです。一方で、郊外立地や男性客が多い立地などではコスメの売れ行きがそれほど良くない。住宅立地では、オフィス街と郊外の真ん中ほどという印象です」
また、一言で「コスメの売れ行きが好調な立地」といっても、売れるブランドには違いがあることも。
ファミリーマートを例に挙げると、同社がコスメECサイトのノインと共に手がけている「sopo」というブランドは、カラーライナーやカラーマスカラといったトレンドアイテムが充実している。一方で、カネボウ化粧品の「media」も取り扱っているが、こちらは「大人の化粧美を考えた」とうたうだけあり、sopoよりも年齢層が高いブランドだ。同じファミリーマートでも、学生が多い立地ではsopoが、ビジネスマンが多い立地ではmediaが人気を集めるわけだ。
● 今年のコンビニは 男性用化粧品に注力か
立地によって売れ筋が大きく変わることも関係し、コンビニ限定コスメが全国どこの店舗でも売り場面積を増やせるかというと、「立地に合わせた売場スペースが必要」と田矢氏。
「ドラッグストアやコスメ専門店のようにコスメだけを取り扱える店舗と違い、コンビニは食料品から日用品まで、あらゆる商品を必要最低限は陳列する必要があります。野球にたとえると、全員がエースで四番打者なのです。つまり、売れない商品は長く店頭に置いておけず、あっという間に売場から消えていきます」
裏を返せば、コスメがよく売れる立地では、売場を広く確保し、目立つ什器を使って大々的にプッシュする店も出てくるかもしれない。コンビニ各社はそれぞれ、売れるコスメの開発に力を注ぐだろう。
今後も成長が見込まれるコンビニコスメ市場。業界を長く見てきた田矢氏に、今後どんな商品が登場するかを予想してもらった。
「まず、メインターゲットの女性に向けたところでは、マスクに付かないリップや、オンライン会議上で顔色が良く見えるメーキャップコスメなどでしょう。コロナ禍特有の悩みをカバーするコスメが出てくる可能性は高いと思います」
長引くマスク生活において、色が落ちにくいリップや、メーク崩れを防止するスプレーといったコスメが、百貨店・ドラッグストアを問わず発売されている。もしも近所のコンビニで、マスク生活にフィットしたコスメが安価に買えるようになれば、気軽に手に取る人も多くなるだろう。
「もう一つが、男性用のスキンケアコスメです。実際『ファミマ!!』や『ナチュラルローソン』の一部店舗では、メンズコスメの『バルクオム』を取り扱っています。コスメというよりボディーケア用品ですが、男性でも、ボディーシートやフェースシートを使う人は多く、コンビニでも売れ筋です。わざわざドラッグストアまでは買いに行かないという男性も、通い慣れているコンビニにメンズコスメが置かれていれば、気になって手に取るかもしれません」
昨今、マスクによる肌荒れに悩み、リモート会議でまじまじと自分の肌と向き合ったことで、スキンケアを見直そうと考えている男性が増えてきている。ビジネスマン向けのコスメがコンビニに並ぶ日も近いかもしれない。
最終更新日:2/26(金)21:46 ダイヤモンド・オンライン