イオン膝元 挑む地元スーパー

イオンの創業の地である三重県には、当然ながらイオンの数が異常に多い。食品に特化したスーパーマーケット業態の「イオン」「イオンスタイル」の出店数だけをみれば北海道の37店舗がトップだが、人口に対しての出店数は三重県が新潟県に次いで2位になる。三重県が新潟県の約半分の面積しかないことを考えれば、この店舗数は多すぎる。東京都(17店)よりも多く、出店数トップ10の都道府県で、政令都市がないのは三重県だけである。



 さらにイオンの源流である「岡田屋」の誕生地である三重県四日市市は、イオンの密集地帯といってもいい。イオン日永店、イオン四日市尾平店、イオン四日市北店の3店舗が31万人の都市に集中し、72万人の相模原市(2店舗)、政令都市の静岡市(1店舗)と比較しても、イオンの多さが目を引く。現在、イオンは千葉県に本社を置くが、商売の原点である“お膝元”といえば三重県四日市市であることは、これらの数字が物語っている。

スーパーサンシのネットスーパーは絶好調だ。旗艦店舗の「日永カヨー店」は年商50億円のうち、約20%超の10億円を宅配事業が叩き出す。13店舗中7店舗でネットスーパーを展開しており、売上全体の2割以上を宅配による売上が占める。

 サービスを利用するためには月額477円(税別)の会費が発生するが、現在の会員数は1万8500人。毎年コンスタントに3000人以上の会員が増えており、“イオン包囲網”の四日市市において、世帯数の約6%がスーパーサンシのネットスーパーを利用していることは、イオンにとっても脅威と言える。過去10年間は2桁成長を続けており、コロナ禍の影響もあって2020年の4月と5月のネットスーパーの売上は、前年同月比70%増で推移した。

「5000円以上で配送費を無料にするネットスーパーもありますが、そうすると余分な商品を購入してしまい、注文する頻度が落ちてしまうんです。それが配送効率の低下につながり、ネットスーパーの赤字の要因になってしまうのです」(高倉照和常務取締役)

 もうひとつのポイントは、自社配送を行っている点だ。一般的なスーパーの利益率は25%前後と他業種と比べて低く、この利益を配送業者と折半してしまうと儲けはほとんど残らない。

 そのことにいち早く気付いたスーパーサンシは、自前で物流の仕組みを構築した。日永カヨー店では35台の保冷庫付きの軽トラックが配備され、多いときに1日1600件の配達を行っている。ドライバーの採用から手配まですべて自社で行っており、外注の配送会社は一切利用しないことで利益を確保している。極めつけは宅配ボックスの設置だ。スーパーサンシの会員になると、鍵付きの専用宅配ボックスを無料で設置してくれる。これにより、再配達することがなくなり、時間と人手のロスを最小限に抑えることができるのである。

 3つ目のポイントは、ネット回りの開発や制作を自社ですべて行っている点である。今まで多くのスーパーを見てきたが、どこの会社もネットのノウハウや情報に疎く、システム開発やホームページの制作は外注しているケースがほとんどだった。

 しかし、スーパーサンシではアプリの開発から受注管理システム、スマホページや動画の制作など、すべて社内のスタッフで行っている。40人のデザイナーとデータアップの人員、20人のシステムエンジニアが常時スタンバイしており、内製化することでネットスーパーのスピード化とコスト削減の両方を実現した。

「配送もシステムも全て外部に委託していたらネットスーパーの利益はでません。もちろん、これらを全て自社で賄うのは大変ですが、やってできないレベルではない。多くのスーパーが本業の片手間でネットスーパーをやろうとするから失敗するんです。売り方も仕組みも本業と全て違います。別のビジネスをやるぐらいの覚悟がなければ、ネットスーパーは成功しないんです」(高倉照和常務取締役)

これらのポイントは、長らく多くのネットスーパーに立ちはだかってきた障壁だった。

スーパーサンシは次のステップとして“お膝元”から飛び出してイオンに勝負を挑む。

 40年間構築してきたネットスーパーのノウハウと仕組みを、2019年から『JAPAN NetMarket』(ジャパンネットマーケット)というブランドで、全国のスーパーにフランチャイザーとして提供し始めた。受注管理システムの提供からピッキング、配送の仕組みなどをすべてコンサルティングし、そのエリアの特性にあったネットスーパーの構築を支援する。

最終更新日:2/25(木)22:03 文春オンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6386078

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