新大阪駅の20番ホームに滑り込んできた鹿児島中央発の「さくら」。折り返しで再び、九州へ向かうまでの時間は24分間。このわずかな時間内で座席やトイレ、ごみ箱などを整備するのがJR東海のグループ会社「関西新幹線サービック」(大阪市淀川区)のスタッフだ。
■プロの技術光る
まさに時間との闘い。新大阪駅の折り返し列車を担当する新大阪第二事業所チーフスタッフの濵野雅隆さん(40)は、すべての乗客の降車が確認されると、きびきびとした動作でデッキに入った。整備終了までの時間は18分だ。
最初にごみ箱を片付けると、車内へ。座席に残されたごみを取り除き、20列ある座席の方向を転換していく。ここまでで約5分。続いて、しわの目立つヘッドレストのシーツを交換。車両の形式によって形状が違うため、準備には注意が必要となる。車両の端から交換忘れがないか、指さし確認。ほうきとちり取りで掃き掃除をしながら、車内をもう1往復。整備を始めて約10分が経過した。
座席の持ち手、汚れた窓を拭く。そして、まもなく16分を迎えるところで整備終了。乗客がぴかぴかの車内に乗り込んだのは、到着してドアが開いた18分後だった。「時間はプレッシャーですが、乗車するお客さまから『ありがとう』と声をかけていただくとうれしい」。濵野さんは充実した表情で列車を見送った。
第二事業所では約200人が働く。12人が1編成8両の整備を行う。濵野さんは9時から午後6時45分までの日勤で、平常時で14本を担当する。整備時間はまちまちで、最も短いのはわずか6分。18分と同じ動きをしていては間に合わない。座席回し、掃き掃除、シーツの交換…。「車内に入った瞬間、どこの整備を優先するか判断しています」。入社は平成30年6月。経験がものをいう瞬間だ。
■安全運行の一翼
実は車内整備を実施しているのはJR西日本、JR九州の車両。いわば「他社」だが、濵野さんは「新大阪は東海道と山陽新幹線の境界。どこの車両とか意識したことはない。すべてをきれいにするだけ」とプロ意識を強調。日本が世界に誇る新幹線は車両がきれいなことでも有名だ。「外国人のお客さまにすごいところを見せたい」とプライドをのぞかせる。
濵野さんは整備作業だけでなく、経験を買われて約2年前から、チーフスタッフとして車内整備後の点検なども行っている。照明が切れていないか、窓にキズはないか、トイレから出てこない人はいないか、1編成の半分をチェックする。異常があれば、車掌らに連絡する。安全運行の一翼を担っているのだ。
最終更新日:4/14(日)15:16 産経新聞