給料は社員が決める 企業の試み

決算書類を見せるから、給与は自分たちで決めて――。化粧品販売と美容室経営を手がける「エコノワ」(岐阜市)は、社員全員が参加する「給与会議」で、給与と経営目標を決めるユニークな働き方改革を進めている。社員の定着率が上がり、「働きがい」にもつながっているという。



 エコノワは、会長の武藤花緒理さん(53)がヘアカラーの輸入販売の会社として2008年に立ち上げた。「ほぼ個人経営だった」という会社が大きく変化したのは17年。母親の美容室を引き継ぐことになった。母親時代のスタッフは全員店を去り、10人の美容師を新たに雇った。

 「人事管理なんてできない」と手探りの中で、早速起きたのが「もっと給料を上げてほしい」との不満の声。「だったら自分で決めてよ」と言うのが、「給与会議」の始まりだった。

 会議は3月と10月の年2回。社員全員が参加する。損益計算書や貸借対照表を提示。来期の目標を立てて、売り上げから人件費にさける費用を逆算して、給与をどう分配するかを決める。

 「周りと比較するから不満が出る。すべてオープンにして話し合った方がいい」と武藤さん。給与会議では、美容師の数が多い中で、事務職の給与引き上げも決まった。

 まだまだ試行錯誤というが、確実に変わったのは社員の意識だという。美容室で販売するシャンプーの予約販売を強化したり、2店舗ある美容室で客層に応じて対応を変えてみる提案があったり……。給与の「原資」を増やそうと、美容師からの発案が増えた。

 化粧品の受注担当の事務員からは、新商品のパッケージデザインのアイデアが出た。自らカメラマンを見つけ、コストを計算し、採用された。

 離職率が高いとされる業界の中で、エコノワでは立ち上げ当時の10人の美容師のうち8人が今も残る。

 今年3月に社長に就いた幸村龍さん(42)もその1人。「美容師がSNSで自ら発信できるようになり、美容室は『箱』で、どこでも構わないという意識が強くなっている」。そんな中で8割の定着率の背景について「学校の文化祭に近いノリです。自ら決めることは経営知識も必要で、大変だけど、楽しい」と話す。

 エコノワでは、美容室の経営を疑似体験するボードゲームなどを使って、社員の経営マインドを育てている。武藤さんが目指すのは「指示ゼロの経営」。「不満の中で働くのではなく、お客様も社員も楽しく幸せになるための実験です」と話す。

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 エコノワの取り組みは、朝日新聞社と転職支援サービスなどを運営するミイダスが共催する「はたらく人ファーストアワード2023」で、1009団体の応募の中から大賞にあたるゴールドを受賞した。(池田孝昭)

最終更新日:3/24(日)21:11 朝日新聞デジタル

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6495729

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