日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収を巡り、バイデン米大統領が反対姿勢を示したことは、日米間の火種となる可能性がある。
日本政府は当面静観する構えだが、4月の岸田文雄首相の米国訪問を控え、難題を抱え込んだ格好だ。
上川陽子外相は15日の記者会見で「個別企業の経営へのコメントは控えたい」と述べるにとどめた。首相周辺は「法令を順守して適正に手続きを進めているので買収に問題はない」と主張した。
USスチールについて、バイデン氏は14日の声明で「米国内で所有・運営される企業だ」と強調。これに先立ち、今秋の大統領選で共和党の候補者指名が確定したトランプ前大統領も、買収を認めない考えを表明している。
バイデン、トランプ両氏の発言には、大統領選をにらんだ駆け引きの側面もある。USスチールが拠点とする東部ペンシルベニア州は選挙結果を左右する激戦州の一つだ。日本政府関係者は「民主党の強い地域だったが、トランプ氏の支持が広がっている」と分析。両陣営の争いに巻き込まれることを警戒する。
首相は今回の訪米時、日系企業が進出する地方都市にも足を運ぶ計画。雇用創出など対米投資をアピールし、日米の経済連携強化につなげる狙いがある。USスチールを巡る問題は、その思惑に水を差しかねない。日本外務省幹部は「米国の動向を注視するしかない」と懸念を示した。
最終更新日:3/16(土)17:42 時事通信