「人出が減って店の売り上げは当然苦しいし、ネット通販も昨年春の緊急事態宣言時のようには伸びていない。この状況が春まで続くなら希望退職で本部人員を減らすことを考えないと」。緊急事態宣言が再発令され外出自粛ムードが続く中、都市部を中心に店舗を構える中堅アパレルの幹部はこう打ち明ける。
2020年末から新型コロナウイルスの感染者数が再拡大し、逆風にさらされているアパレル業界。ユニクロなどの実用衣料を扱う一部の低価格ブランドを除き、多くのアパレル企業の月次売上高は昨年12月から再び大幅な減少に陥っている。
同社は希望退職と併せて、昨年発表した不採算事業の整理などの構造改革(5ブランド廃止、廃止ブランドの店舗を含めた低採算店約360店の撤退)を追加で実施するとして、百貨店を中心に展開する7ブランドの廃止と約450店舗の撤退を2021年度に行う方針も明らかにした。
ワールドの担当者は「都心の百貨店を中心に客足の戻りが弱く、世の中の変化への対応をより急ぐ必要があると判断した。今後は主力ブランドにリソースを集中させ、生活雑貨などの領域も強化していきたい」と話す。
レナウンの経営破綻の影響もあり、アパレル企業に対する金融機関の視線は厳しさを増している。複数のアパレルの幹部は「銀行は借入期間の延長には応じてくれても、それなりの規模の新規融資枠の設定は非常に難しくなっている」と嘆く。コロナ影響が長引くとみて、金融機関からの信頼を得るうえでも、体力のあるうちに人員削減でコスト圧縮を急ぎ、収益体質の改善を図ろうとするのは当然の判断とも言える。
ただし、どの企業も簡単に人員削減に踏み切れるわけではない。希望退職は多くの場合、40代以上の中高年社員が対象で、退職者には「基本給〇〇カ月分」などといった相応の割増金が支払われる。会社にとっては人員を減らす分だけ一時的に多額のキャッシュアウトが避けられず、業況が厳しい中で決断をためらう会社も少なくない。
最終更新日:2/19(金)11:41 東洋経済オンライン