上がり続ける進学費 受験生の思い

大学入学共通テストの出願者数は、前身のセンター試験時代も含め32年ぶりに50万人を割ったが、大学進学率自体は高まっている。だが、受験生や家庭が支払う学費は上がり続けており、家計を直撃している。能登半島地震で被災した家庭には生活再建の負担ものしかかる。共通テストに挑んだ受験生は何を思うのか。



 文部科学省の2023年度調査によると、私立大の学部入学生が初年度に納めた授業料は平均約95万9000円。10年前の13年度(約86万円)より10万円近く高い。入学金と施設整備費を含めた「学生納付金」は約136万5000円だ。

 能登半島地震で被災した受験生の中には、被災による経済不安が重なった生徒もいる。「今後、家で必要になるお金はもっと増える。絶対に失敗できない」。能登半島地震で、自宅が被害を受けた石川県立七尾高校3年の銭元勝大さん(18)は、そんな思いを胸に共通テストに臨んだという。

 教壇に立つのが夢で第1志望は国立大教育学部だ。ただ、3人兄妹の長男で自宅の復旧費用などもかさむことから、将来的な家計の負担も考えて奨学金を借り、入学後はアルバイトもするつもりだ。でも「お金の不安は大きいです」。

 政府は進学費用の負担を抑えるため、25年度から扶養する子供が3人以上いる世帯を対象に学費負担を減免する政策を打ち出した。大学の授業料や入学金については「無償化」をうたうが、補助額には上限が設けられ、対象になる子育て世帯は約1割とみられる。銭元さんは「対象になるなら妹たちの選択肢を増やすことになるのでありがたい。地震で経済的不安が増したのは確かですが、今は合格だけを考えます」と話した。

 被災地以外でも受験生を大学へ送り出す家庭の懐事情は厳しさを増す。東京地区私立大学教職員組合連合が、首都圏にある私大新入生の保護者に家計の状況を尋ねた調査では、22年度の毎月の仕送り額は平均8万8600円でピークだった1994年度(12万4900円)を大きく下回った。

 生活費や学費を工面するため、日本学生支援機構の貸与型奨学金を借りる学生も多い。体育教員を目指し北海道内の私大を志望する札幌市の高校3年、川村心結(しゆう)さん(18)は「通学費や通信費など親に負担をかけたくないお金もあるので、アルバイトと奨学金で何とかするつもりです」。

 北九州市立大法学部を目指す福岡市の私立高3年の女子生徒(18)も「弟の進学もあるので、貸与型奨学金を利用するつもりです」と話す。進学費用について家庭で何度も相談したという。

 教育専門通信社「大学通信」で情報調査・編集部長を務める井沢秀さんは、政府の修学支援政策について「『やらないよりは、やった方が良い』ぐらいの支援にとどまっています。どこまで恩恵が広がるかは疑問です」と指摘する。仕送り額が減り続け、学業にかけるべき時間を削ってアルバイトに打ち込む学生も珍しくない現状を踏まえると「より大胆な給付型の政策が必要です」と主張。大学進学率は5割を超えており、井沢さんは「社会を支えていくのは大学を卒業した人が中心になる。そういう人材を育てる環境づくりには敏感になってほしい」と語った。【李英浩、稲生陽、谷口拓未、長岡健太郎】

最終更新日:1/15(月)11:57 毎日新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6488229

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