防災グッズに関心 備えのヒントは

1日に発生した能登半島地震を受け、防災グッズなど災害時の備えに関心が高まっている。高齢者、乳幼児がいるケースや持病があるなど、それぞれの状況に応じた準備と併せ、命を守るための行動につなげる意識も再確認が必要そうだ。



 ◇防災グッズへの関心、急伸

 「多くの人が備えを進めている状況だと思う。ライフスタイルにあったグッズを適切に選んでほしい」。こう話すのは、ホームセンターチェーンのカインズ(埼玉県本庄市)の担当者だ。カインズでは地震発生後、防災関連グッズの販売数が急増している。全国239店舗とネットショップの販売状況を集計したところ、今月1~7日は前年同週比(商品別)で、アルファ米が約26倍▽非常用トイレが約23倍▽家具の転倒防止ポールが約6倍の売れ行きとなるなどした。同じくホームセンターを運営するDCM(東京都品川区)も同様だ。同社の担当者は「非常用トイレや水をためるタンク、家具転倒防止用のポール、保温シートなどを買い求める人や問い合わせが増えている」と話す。

 オークションサイトなどの価格検索サービスを展開するオークファン(品川区)によると、震災後に防災関連商品の平均落札価格や取引数が増加。同社は「充電器や寝具、食料など避難先で役立つモノの取引は、震災直前の昨年12月25~31日の1週間と比べ、震災後1週間では3・5倍に増えた」としている。

 インターネット上で、防災グッズについて調べる人も増えている。防災事業を手がけるIKUSA(豊島区)の防災用品を入れた「防災リュック」の特集ページ(https://asobi-bosai.com/blog/202304143763/)は、昨年12月の1カ月間の閲覧数は約3500件だったが、今年1月1日からの9日間で約2万4000件を超えた。

 ◇何を用意?

 具体的には何を用意したらいいのか。IKUSAの防災士、五十里航さんは「最低限防災リュックに入れたいもの」として、1日分に当たる500ミリリットル入りペットボトル計3本分の水▽すぐに食べられるレトルト食品や缶詰、栄養補助食品などの食料▽携帯トイレ――をあげた。

 「追加したいもの」として、女性の場合は生理用品▽サニタリーショーツ▽使用済みの生理用品などを捨てやすい中身の見えないゴミ袋とした。子どもがいる家庭は、子ども用おむつ▽ミルク▽哺乳瓶、高齢者がいる家庭は、大人用おむつ▽介護用品▽入れ歯と洗浄剤を勧める。

 生理用品やおむつなどの衛生用品は、普段から使い慣れているものを数日分用意しておくとよいという。入れ歯なども本人用に作られたものでないと使うのは難しい。ミルクは、水やお湯がなくても飲めるタイプも有効だという。五十里さんは「こうした備えと併せて、地域の防災イベントに参加するなど家族で防災意識を高めるとより安心」と話す。

 ◇モノの備え以外にも

 記者の知人らから聞いた備えのヒントも紹介したい。

 1995年の阪神大震災を経験した知人女性は、震災後、寝室のベッド脇と職場にスニーカーを置くようにしてきた。震災でがれきやガラスの破片が室内外に散乱し、歩いて移動するのが困難な経験をしたためだ。

 女性はその後、移住先の東京で2011年の東日本大震災を経験した。鉄道の運休などで多くの帰宅困難者が出るなか、女性はハイヒールから職場に常備していたスニーカーに履き替え、徒歩で勤務先から子どもの預け先に向かった。当日中に子どもと会うことができたという。

 記者が東日本大震災の被災地、宮城県石巻市に住んでいた21年に知ったのは、昔から地震が多い三陸地方に伝わる言葉「津波てんでんこ」だ。「津波が来たら、一人ひとりがてんでばらばらに高台に向かって逃げろ」という意味を持つ。自分の命は自分で守ることの重要性を説き、率先して逃げる姿を見せることで周囲の避難につなげるという。

 東日本大震災では、家族を心配して自宅に引き返した人が命を落としたケースも多い。「なぜもっと強く引き留めなかったのか」と悔やむ人はいまだに多く、古くからの教訓の意義は重い。

 防災グッズの用意や災害時の約束事の確認など、家庭でできることを積み重ねて減災につなげることが大切だ。【嶋田夕子】

最終更新日:1/13(土)9:55 毎日新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6488077

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