毎年恒例となるバレンタインデーの季節がやってきました。
「今年はいったいいくつのチョコレートをもらえるのか……」
いや、そんな幸せを享受できるのはごく限られた人たちです。大多数はひとつももらえず、心のなかで涙を流しながら2月14日が過ぎ去るのを待っていることでしょう(多分)。
今回のバレンタインデーは幸いにも(?)日曜日のため、チョコレートをもらってうれしそうな人や、渡そうとドキドキしている人を目にしなくていられます。よかったよかった。あ、前倒しで金曜日(12日)という可能性もあるのか……
それはそうと、バレンタインデーにはなぜチョコレートを贈るのでしょうか。
チョコレートはもともと中米の先住民が栽培していたもので、大航海時代(15世紀~17世紀前半)にヨーロッパへもたらされました。そして、原料であるカカオの苦みを消すために砂糖を使って消費されるようになりました。
当時は液体でしたが、19世紀にイギリスで固形にする技術が開発されて大量生産が始まると、気軽なお菓子として世界に広まっていきました。
現在ではコンビニで売られている手軽なものから特別な日に贈る高級品まで、日本人にとって最も親しみのあるお菓子のひとつとなりました。
バレンタインデーにチョコレートを渡す風習について、口の悪い人たちはよく「チョコレート会社の陰謀」と言います。しかしその歴史を探ると、もちろん陰謀ではなく販促によって根付いたことがわかります。
この出来事がバレンタインの起源なのかと言えば、そうではありません。同じようなことを考えた人はほかにもいたのです。
その起源は多くの人たちにとって興味があるテーマなのか、これまでも多くの研究がなされています。
社会学者の小笠原祐子さんによる『OLたちの〈レジスタンス〉』(中央公論社、1998年)では1章をバレンタインデーに費やし、各社への調査を通して、その成立過程を検討しています。
また、社会経済地理学者の山田晴通(はるみち)さんの論文「『バレンタイン・チョコレート』はどこからきたのか(1)」(『東京経済大学人文自然科学論集』124、 2007年)は、小笠原さんの研究を基にさらに調査し、成立時期の状況を考察しています。
これらの研究によれば、日本で最初にバレンタインデーとチョコレートが関連付けられたのは、洋菓子大手・モロゾフ(神戸市)が1936年2月12日、英字新聞『The Japan Advertiser』に出した広告とされています。しかし残念ながら、当時は広く認知されなかったようです。
戦後になり、愛情表現として贈り物をする欧米の風習を販促に利用する試みが始まります。前述の論考には、ケーキやハート型のお菓子など、さまざまな試みが行われてきたことが記されています。
これらの研究から総合すると、バレンタインデーの風習は、誰か特定の個人や企業が始めたものではなく、1年に1度「女性から愛を打ち明けてよい日という認識」が共有されていくなかで、徐々に定着していったということがうかがえます。
最終更新日:2/11(木)15:58 アーバン ライフ メトロ