11月30日に発売されたばかりの2025年大阪・関西万博(4月13日~10月13日)の前売り入場券を巡って、そごが生じている。日本国際博覧会協会が販売を委託した旅行会社8社のうち、30日に取り扱いを始めたのは半数の4社。販売方法も自社のウェブサイトのみで、どの社も店頭での対面販売を行っていない。入場券は電子チケットのため、協会はインターネットの操作に不慣れな人向けに店頭での販売を想定していたが、当てが外れた形だ。
◇鳴り物入り 店頭販売はゼロ
毎日新聞が全8社に販売方法などを尋ねて判明した。協会はホームページ(HP)で「電子チケットに不慣れな方は、旅行代理店などの販売事業者からご購入することもできます」とアピールしているが、現状は店頭に赴いても入場券を買うことができない。協会の担当局長は取材に「販売方法や販売時期については契約上、事業者側の裁量に任せており、認識が甘かった部分がある。大変申し訳ない」と謝罪した。
協会は機運醸成につなげるため、開幕まで500日となった30日に照準を合わせて、前売り入場券の販売を始めた。パソコンやスマートフォンで公式サイトから申し込む方法のほか、同じタイミングでの店頭販売を想定。29日にはHPで8社の社名を公表した。「協会と契約を締結した販売事業者の窓口およびウェブサイトからご購入いただけます」と案内している。
また、発売前の報道陣への説明でも、デジタル機器の操作が苦手な人に向けた委託販売を実施すると説明。店頭で購入してもらい、事業者側が紙に印刷して渡すなどのプランを明かしていた。
ところが、蓋(ふた)を開けてみると、30日から入場券の取り扱いを始めたのは、エイチ・アイ・エス(HIS)▽JTB▽日本旅行▽東武トップツアーズ――の4社。いずれも自社のウェブサイトのみでの販売だった。
このうち、日本旅行は店頭でも入場券を扱う予定があるが、現状は「準備中」と回答。HISとJTBは店頭販売を予定していない。東武トップツアーズは入場券にホテルなどを組み合わせた旅行商品の店頭販売は想定しているが、入場券のみの店頭販売は未定という。
現在、ウェブサイト、店頭とも取り扱いのない4社のうち、クラブツーリズムは開幕半年前に合わせて旅行商品として売り出すとしたが、残る3社は販売時期を明らかにしていない。
◇500日前開始「時期尚早」
こうした背景には、実際に会場を訪れるまでの手続きの煩雑さがあるとみられる。入場券の購入に必要なIDを取得し、入場券を購入しても、別途、入場日時やパビリオンの観覧予約が必要になる。また、旅行会社側には、客のスケジュールが固まる半年前ごろをめどに売り出したいという戦略もありそうだ。
前売り券は一日券の「超早割」が大人6000円など、同7500円とする会期中販売の一日券に比べて割安な料金設定となっている。しかし、入場日時を予約できるのは原則希望日の半年前からで、パビリオンの予約は同3カ月前から。開幕日に行きたい場合、いま購入しても、24年10月以降に改めて手続きが必要になる。
店頭で入場券を販売する場合、客に代わってIDを取得し、入場券を購入するだけで終わらず、その後の入場日時やパビリオンの予約までフォローする事態となりかねない。「『GoToトラベル』(新型コロナウイルス禍の観光支援策)でも、ウェブサイトでの手続きに手を出しづらい高齢者がいた」。ある旅行会社の担当者は、店頭販売にも一定の需要を見込む。
しかし、業界関係者は「6000円の売り上げを得るために、かなりの手間がかかる。手数料収入があるといっても、事業としては割に合わない」と旅行会社の立場を代弁。旅行商品を扱う予定の会社の担当者も「現時点では開幕時期のホテルの相場観が分からず、後で金額を変更すればお客さんに迷惑がかかる」と、500日前からの販売は時期尚早だと明かした。
店頭販売が行われていない現状について、協会の木村和昭・入場券担当局長は「予約時に再度来店対応が必要になるといった『二度手間』が事業者に敬遠されているのかもしれない。前売り券が売り切れることはなく、入場日時やパビリオンの予約もまだできないので、もう少し待ってもらえれば」と釈明した。【藤河匠、東久保逸夫、宇都宮裕一】
最終更新日:12/7(木)10:39 毎日新聞