コロナ禍が明け、にぎわいが戻った名古屋市の繁華街・錦三(きんさん、中区錦3丁目)で、街を悩ませてきた「悪習」も復活しつつある。客引き、ぼったくり、ごみのポイ捨て……。久しぶりに行動制限がない忘年会シーズンを控え、愛知県警などが注意を呼びかける。
「立ち飲みなんです。でも名刺をいただければ奥の席に案内できます」。今夏出張で名古屋を訪れた会社員の50代男性は、錦三のビルの前で店員らしき女性にこう言われた。ちょうど同僚と2軒目を探していた。
名刺を渡して入店したバーは、30代だという女性が店主だった。談笑しながら2時間半がすぎた。勘定は10万円を超えていた。
男性が「これは払えない」と訴えると、奥から30、40代くらいの男が出てきた。店主も血相を変え、「会社に言うぞ」などと語気を強めた。入店時に説明はなかったが、会員制の店だといい、会員にならないならビジター料金の支払いも迫られた。
男性が呼んだ警察官に対し男は「民事不介入だ」と意に介さない。「銀座のすし屋に料金表はないだろ」と言い放ち、男性の免許証の写真も撮った。5時間ほどして、約7万円を支払うことでその場は収まった。
「名刺を見て県外居住者かどうかを判断していたのかもしれない」。男性は免許証の情報が悪用されないか、いまも気をもむ。
■ウェブサイトで違反した店舗名や代表者名などを公表
県警によると、錦三を含む栄地区には接待飲食店や性風俗店が1500軒以上ある。今年1~10月のぼったくりの被害相談は109件。22件だった昨年1年間を大きく上回る。約4割が県外客からだ。「キャバクラで760万円を請求された」という事例もあった。
県ぼったくり防止条例(2017年施行)は、料金表の店内掲示を義務づけ、不当な勧誘や料金の取り立てを禁じる。錦三については、規制の必要が特に高い特別区域に指定。違反すれば6カ月以下の懲役や罰金などの罰則もある。
だが取り締まりの対象となる店舗は、「酒類を提供し、かつ接待をして営む」形態だ。いずれかの要件が欠けると対象外で、さらに一度支払ってしまうと返金の可能性は低い。
県警は連日、錦三でパトロールをして、「客引きにはついて行かないで。料金表を確認して」などと呼びかける。ウェブサイト(https://www.pref.aichi.jp/police/syokai/houritsu/sekou-kaisei/hoan/bottakuri-kouhyou.html)では、違反した店舗名や代表者名などを公表している。
最終更新日:11/30(木)19:18 朝日新聞デジタル