来年の国公立受験 宿泊難民の危機

来年2月の国公立大学2次試験で、例年より受験生の宿泊先確保が難しくなるとの懸念が広がっている。試験は同月25、26日を中心に実施されるが、23~25日は土曜日を含む3連休。元号が令和となり、23日の天皇誕生日が祝日になって初めて3連休と試験日程が一部重なる。インバウンド(訪日外国人観光客)の回復もあって、現段階で満室になっているホテルも。関係者は「なるべく早めに予約してほしい」と呼びかけている。



■1年以上前から予約

京都市左京区の京都大学にほど近いホテル。宿泊予約担当者は「毎年かなり早い時期から予約が入るが、今年はすでにほぼ満室」と話す。

このホテルでは例年、2次試験前期日程の前後は受験生の予約でほぼいっぱいになるため、宴会場を自習スペースとして開放するなどしている。今年も大学入学共通テストの出願日を過ぎた9月下旬頃から予約が増え始めたといい、1年以上前から予約する受験生もいるという。

インターネットの宿泊予約サイトを調べてみた。京大近辺の宿泊施設は、前期日程の前日に当たる来年2月24日と25日は空室ゼロが目立っていた。

■コロナ前と同水準

背景にあるのは観光業の復調だ。新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行して行動制限がなくなり、ホテルや旅館などの稼働率は順調に戻り始めている。政府観光局によると、9月の訪日外国人客数は218万4300人。コロナ前の令和元年同月比で96・1%まで戻った。

今夏、帝国データバンクが発表した全国の旅館・ホテル対象の調査結果でも、約800の事業者のうち、6割が「増収した(見込み含む)」と回答。一方、コロナ禍で従業員を減らしたことに伴う人手不足が深刻化し、ニーズに対応しきれないという施設もある。「円安の影響もあり、コロナ前よりさらに客足が伸びるかもしれない」とみるホテル関係者もいる。

■宿泊料金の高騰も

大手予備校の河合塾によると、今夏行った「全統共通テスト模試」の受験者のうち、約21万8千人が国公立大学を志望。このなかで居住地の近隣ではなく、遠方の国公立大学を志望する受験生は41%に上る。コロナ禍では受験生の地元志向も一時強まったが、そうした傾向も収まってきたという。

こうした状況を踏まえ、河合塾の担当者は「ホテルの混雑状況が読みづらく、宿泊料金の高騰もある」と危惧。早めの宿泊先確保を呼びかけている。

受験生の宿泊場所が確保できず、問題になったケースは過去にもあった。平成30年の前期日程では、福岡で引退を控えた安室奈美恵さんら大物アーティストのコンサートや薬剤師国家試験などの日程が重なり、宿泊場所が確保できない受験生が続出。解消に向け、民間企業の寮などが提供された例もあったという。

近年は地方に試験会場を設けていた私立大学が経費節減などを理由に、撤退する動きが目立つといい、河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員は「都心と比べ、地方から遠隔地の大学を志望する受験生にとって不利な点は多い」と話した。(木ノ下めぐみ)

最終更新日:11/11(土)17:32 産経新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6481364

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