従業員の給与を一定以上の割合で増やした企業の法人税を優遇する賃上げ促進税制を巡り、政府・与党が来年度の税制改正で、大企業の賃上げの要件に「5%以上」を新たに加える方向で検討していることが10日、分かった。現行制度の「3%以上」「4%以上」を上回る税額控除とし、賃上げの動きを加速させて物価上昇を上回る水準に引き上げたい考えだ。
現行制度では、大企業は給与などの支給総額が前年度比で3%以上増えれば、給与増加額の15%を税額控除する。4%以上なら10%上乗せして25%を控除。複数の関係者によると、ここに「5%以上」の要件を追加する案が浮上している。
税額控除の割合は3割を超えるとみられる。公明党の西田実仁税制調査会長は賃上げ促進税制に関し「思い切って減税措置をとることが大事」としており、相当な割合の控除となりそうだ。与党税制調査会が年末にかけて制度設計を議論する。
賃上げの動きは活発化しており、生命保険大手の明治安田生命は来年から社員の賃金を平均7%上げ、繊維や流通などの労働組合でつくるUAゼンセンも来春闘で定期昇給分を合わせ6%の賃上げ目標を掲げる方向だ。
賃上げ促進税制拡充には、こうした流れを加速させる狙いがある。与党関係者は「給料が物価高に追い付くようにする」と、賃上げ促進に意欲をみせた。政府内には「5%以上」を超える要件の追加論もある。
一方、中小企業は「1・5%以上」「2・5%以上」を要件としているが、大企業ほどの賃上げ余力は見込めないとして、別の枠組みを新たに設けて賃上げを促す方策を模索する。
賃上げ促進税制ではほかに、期間延長や赤字の中小企業を念頭にした税額控除の繰越制度などが検討課題となっている。
最終更新日:11/10(金)23:41 産経新聞